1 元 番・村上 陽司の月並みな後悔

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1 元 番・村上 陽司の月並みな後悔

あいつは3歳の春からずっと一緒。 何をするにも一緒だった幼馴染み。 習い事も趣味も一緒。 高校迄は学校も同じだった。 年頃になったらそばに居たあいつを意識して、当たり前みたいに恋をして、キスをして、セックスをして。 青春の全てを共有してた。 当たり前に隣にいるものだと思い過ぎて、ある日突然現れた新鮮な運命に目が眩んだ。 目眩しが解けた時には、あいつはもう何処にもいなくて。 俺が呼べば何時でもそこにいるもんだと思ってたから困惑した。 俺とあいつは一心同体みたいなもんだと勝手に思い込んでいた。あいつにも別に心があって、俺のした事に傷ついてたんだって気づいた時には跡形も無く消えていた。 家も何時の間にか引越していて、共通の友人達も誰も何も知らなかった。 知っていても教えてくれなかっただけかもしれないな。 俺が酷い事をしたんだって、今ならわかる。 気づくのが遅過ぎた。 アイツは俺が何をしても許してくれるし待っててくれると思い込んでた。 あいつとは違う人間(Ω)を、あいつの目の前で選んでおきながら。 そんな事をされたあいつは、俺をどう思って、どれだけ悩んで苦しんで見切りをつけたのか。それを思うと胸が傷んだ。 今更。 今更だ。 だから今、あいつのそばに誰が居たって、俺が何を言える筋合いのものでもないのに。 なのにいざ それを目の当たりにすると、俺の心の中は暴風のように吹き荒れている。 本当にこんな事が起こるものなのか。 これは俺に下された天罰だという事なのか。 お前を選び続けていれば、こんな未来が来る事にはならなかったのだろうか。 俺は、どうしたら良い。
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