ハル秋の筆法~過去~

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「ハルはお前が心配だったんだよ。二ノ宮家の娘で可愛い、そんな新入生を男たちが狙わないはずがないって。だからガードを付けることにしたんだろ」 「そんな勝手な思い込みを」 怒りも一周すると呆れるわ。 「返せ、私の青春。夢のサッカー部のマネージャー」 「なんだよ、そのサッカー部にイケメンでもいたのか」 「いや、残念ながらいないけど。欲しかったのは男子とキャーキャーじゃなくて、そのポジション」 「ポジション?サッカー部の?フォワードとか?まさか男子に混じってレギュラー狙ってた?」 「違う違う。だから誰か特定の選手じゃなくて。”サッカー部のマネージャー”っていうポジションだよ」 えへっと笑顔を浮かべる。 それを見た兄の口からは大きなため息が。それに私を見る目も心なしかさっきより冷たい。 「水音、お前もう二度と女子に囲まれてるハルのこと悪く言うなよ。お前はマネージャーになって男子とわいわいきゃっきゃしたかったってことだろ」 「違うわっ!ボケ兄」 失礼な。 「うちの学校のサッカー部は常に全国大会を狙えるポジションにある強豪校。監督、コーチ、専属トレーナーもいて女子マネージャーも5人もいるような特別な部活なんだよ。その中に入って職種間のつなぎ役になったり縁の下の力持ち的な仕事をして更にそのチームが全国大会で優勝したりしたら・・・その時その時間を共有できたら。みんなでやったーってその中にいられたら最高の経験じゃない?」 「言い方は違うが、自分で競技をしないで全国大会優勝の気分を味わいたいと言っているように聞こえたのは気のせいか?」 おおー、さすが兄。こわ。兄、こわっ。 そんな気持ちも全くなかったとは言えない。 どうせ応援するのなら強いチームがいいといえる。 強豪のサッカー部ではなく一勝するのも難しいような弱小部活のマネージャーをやりたいかと聞かれたらたぶん、やりたくない。 「サポートよ。サポートしたいなって思っただけ」 「じゃあ有名進学校の有名な生徒会のサポートできて良かったな」 「・・・もういい」 兄との会話を切り上げたものの私の怒りはハルに向かっていた。
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