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不確かで揺るぎない。
お正月気分はすっかり抜けて、スーパーやコンビニの店頭には巻き寿司の広告が貼られている。
一年で一番寒い季節だ。
同棲を決めた二人はすぐにも一緒に暮らしたかったが、なし崩し的になることはやめようと話し合った。もう大人なのだから自分たちで決めても構わない。それでも二人を大切に思ってくれる家族にきちんと報告してからにしたいと考えたのだ。
「すぐにOKもらえるなんて思ってなかった」
慎重な性格の真思が充之との同居に不安を見せないことが意外だった。
「自分でもびっくりしてる。付き合おうって言われたときのほうがびびったもん」
何でもないことのような口ぶりだ。
「アツシに憧れてたけど、自分と関わることはないだろうって思ってた」
でもそれだけじゃなかったんだ。
「再会して、僕を覚えててくれたことが嬉しくて。交際を断ったら会えなくなるかもって考えるとつらくて。身体が半分になったような気持ちだった」
多分、高校生の頃から好きだったよ。
まっすぐ充之を見つめる瞳に迷いはなかった。
その言葉がどれほど勇気をくれるか。
伝える方法がわからなくて、充之はただ抱きしめる。
真思が腕の中で小さく笑った。
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