18歳。

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警察と、カード会社に連絡した。 全部、全部、ママがやってくれた。 私はどうしたらいいか分からなかった。 ただただ不安な気持ちで、ママがあちこちに電話するのを見ていた。 怖かった。全部怖かった。 無理やり連れ去られそうになったことも、知らないカード明細も、全部吐きそうになるほど怖かった。 一段落ついたママは、ソファに座る私の方を見る。 「…今回のことはパパにも言うからね。いいね。」 当然だ。 こんなことになって、パパに叱られないわけがない。 *** 「美嘉、座りなさい。」 怒鳴られると思ってたのに、パパは怒鳴らなかった。 パパはソファに座ると、私にも座ることを促して、それから重苦しい雰囲気で口を開く。 「美嘉。 大人になるっていうのは、責任を伴うんだ。」 「…はい。」 責任、とは。 私には、まだその実感がない。 親と一緒に暮らしてて、高校に通ってて、親が、先生が、大人が守ってくれるのが当然の状態。 そんな中で、大人の“楽しいトコロ”だけをつまみ食いして、いい気分になっていた。 パパは自らの感情を抑えるようにして、ゆっくりと言葉を選んで発する。 「今日はママがやってくれたけど、本来警察への連絡もカード会社への連絡も、全部美嘉がしないといけないことだ。 なぜなら美嘉はもう成人していて、全部自分の意志で契約した。 美嘉、いいか。美味しいところだけ享受して、面倒なことや、怖いことは親に任せるっていうのは、それは大人じゃない。 もちろん、パパとママは美嘉が困ってたら助けたいし、なんとかしてあげたい。 でも、」 パパは私の背中を撫でた。 「親はいつでも助けられるわけじゃない。パパやママのいないところで美嘉が危ない目にあっても、助けることはできない。 でも悪い大人は、まだ何も分からない美嘉たちを狙ってつけ込んでくる。それは分かるか。」 わ、かる。 否、わからされた。 『悪い大人はね、君たちのこと、ヨダレ垂らして待ってたから。』 今日の男の言葉が、私の頭の中で反芻される。 つい最近までは18歳でも未成年の扱いだった。そんなお子様が、いきなり「成人です」なんてなったら、良いカモにされるに決まってる。 だって、中身は実質コドモなんだから。
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