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#1 プロローグ
モザーク公国からの招待状を前に、男は悩んでいた。
招待状には回りくどい美辞麗句が並んでいたが、ようは国同士で賭博の大会をしようというのだ、もちろん大金を賭けて。
モザーク公国は、カジノと呼ばれる賭博場を主な収入源としている。
人口わずか数千人という小さな国だが、カジノから得られる金は莫大だ。それを元手に、法皇を陰で操っているとまで噂されるほどの影響力を手にしていた。
そしていま、モザークはこの国、リーン王国を狙っている。
招待という建前で取り繕ってはいるが、断ればどんな圧力をかけてくるか分からない。
種目は自由だという。
カジノにはルーレットをはじめ、あらゆるゲームが揃っている。
だが、真剣勝負ということになれば、トランプを使ったゲームということになるだろう。トランプはリーン発祥のカードゲームであり、大人から子供まで扱いは慣れている。
問題は選手だ。リーンでも酒場を中心にカード賭博は人気があるが、もっぱら小銭のやりとりをしている程度だ。大金を賭けての勝負となると、話が違ってくることは間違いない。
しかも頭が痛いことに、城内にはモザークとの内通者がいる。
それが誰か確証がない状態で、近衛隊から選抜するのは危険だ。
とはいえ城外で、カードゲームに長け、さらにこの国の命運を託せるような信頼のおける人間が見つかるだろうか?
「いや、なんとしても探し出すしかない」
ラハイアは、自分を鼓舞するかのように、そう呟いた。
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