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「俺のためにいろいろ準備して、頑張ってくれたのか?」
「別に、そっ、そんなことねぇし」
稜のために努力したことがバレて気恥ずかしくなり、健人はすぐ近くにあった稜の枕を引っ張ってきて枕で顔を隠す。
さっきから顔が熱い。稜に迫られて真っ赤にしている顔を見られたくはない。
「ん? なんだこれ」
あっと思ったときには、稜に取られていた。それは、枕の下に仕掛けてあった健人が書いた稜への手紙だ。
やばい。隠していたことをすっかり忘れていた。
本当ならサプライズパーティーが終わって稜とイチャイチャして、健人が帰ったあとに『枕の下見てみろよ』とメールをするつもりだったのに。
「おいっ、見るなっ!」
稜から手紙を奪おうとしたのに、呆気なくいなされる。
無情にも稜は封を開け、中身の手紙を読み始めた。
「えーっと……」
「こらっ!」
やばい。やばすぎる。手紙の内容は痛々しいくらいに稜への愛を語ってしまっている。
最後の文章は『Happy Birthday稜。来年の誕生日も、その次の誕生日も、ずっと一緒にいたい。稜、大好き』だ。
「健人、お前は、サプライズなしに見せかけてこんなサプライズを俺に仕掛けようとしてたのか?」
稜が身体を震わせた。あの小っ恥ずかしい手紙で、喜んでくれたのだろうか。それとも驚き呆れているのだろうか。
「あの、いや、プレゼントが間に合わなかったから、その……あの……」
手紙を書くなんて恥ずかしい奴だと思われただろうか。メールだってあるし、そもそも面と向かって気持ちを伝えればいいのに。
「もしかして健人って、俺のことめちゃくちゃ愛してくれてるの?」
稜はやたらと嬉しそうな顔で健人に迫る。
「バカ……そんなこと今さら聞くなよ……」
健人は稜を直視できなくて目を逸らす。
稜のことが大好きに決まっている。大好きだから一緒にいるし、稜のことを喜ばせたい一心で、サプライズだって仕掛けたのだから。
「すっ……」
いつもなら、誤魔化してしまうところだ。でも今日だけは、誕生日くらいは気持ちを伝えてみたい。
「好きに決まってる。誕生日サプライズ失敗した俺を責めたりしないし、いつも俺に優しくて、なのにめちゃくちゃかっこよくて、す、好き……」
普段なら絶対に言えないようなことを言ってしまった。
言ってしまってから恥ずかしくなって、健人は稜の身体に腕を回して抱きついた。こうすれば顔を稜に見られないで済むからだ。
言葉にするのは苦手だから、いつもこうやって稜に抱きつくことしかできない。
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