真っ赤なクリスマス

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真っ赤なクリスマス

 雨は嫌いだ。ジメジメしているし、どんよりと暗いし、頭だけでなく体中がズキズキと痛い。  いや、この痛みは雨のせいではない。  私の幸せだけでなく、命までもを奪うこの人のせいだ。 「全部あんたが悪い」  喉を抑えて床に倒れ込んだ私をニヤリと微笑みながら見下ろす。  愛というのは時に甘い蜜になり、時に猛毒に変わる。  愛のためと人殺しにまで手を染めるほど脳が(むしば)まれてしまう猛毒。  そして、まさか自分がその渦中にいようとは半年前の私は一ミリも思ってもいなかった。    25歳で結婚し、専業主婦として夫を支え、まだ子供に恵まれてはいなかったがそれでも二人の生活を楽しんでいた。  夫を尊敬し、夫に感謝し、夫に尽くす人生は何より幸せだった。  だが、それらの幸せが偽りの上に成り立っていた事をあの頃は気付いていなかった。  幸せに見える人々が必ずしも幸せだとは限らない。それに気付いていなくても、気付きながらも幸せを保とうとしていたとしても。
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