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降りちゃうの、ちょっと寂しいな、とまだ老婆がいるかもしれない方を振り返りながら、壱花は並んで船を降りていた。
前に向き直った壱花は、
「あれ?」
と声を上げる。
先に降りていく人たちの中に高尾の姿を見た気がしたのだ。
「高尾さん、また船に乗ったんですかね?」
「何処だ?」
と倫太郎が後ろから訊いてきたときにはもう、見えなくなっていた。
「高尾がいたのか?
見間違いだろう。
もう夜は明けてるし。
あやかしどもは帰って寝てるだろうよ」
ウロウロしてたら、灰になるじゃないか、と言う倫太郎に、いや高尾さん、吸血鬼じゃないんで。
高尾さんの正体、可愛い子狐でしたよ、と思いながら、壱花は言った。
「キヨ花さんとか、昼間新幹線で会ったりするじゃないですか」
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