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1年生
「樹! 絶対、仲良くなれると思うんだー!」
一緒の高校へ行こうと誘ってくれた幼馴染である橘律は楽しげに俺にそう言った。
どうやら、中学時代の友人を紹介してくれるらしい。
一人見知りで、緊張しいで、うまく話せなくなってしまった俺は、きちんと挨拶できるのか不安だ。
「だいじょーぶだよ。おれが一緒にいるからね」
律は何でこんなに優しいのだろう。何でわかっちゃうんだろう。
「樹、すぐに顔に出るからねー」
「そ……んなこと……な……い……」
ふくれっ面をした俺を見て、律は優しく笑った。
◇◇◇
教室で紹介されたのは、目つきの鋭い男の子と優しげな雰囲気の男の子。
「よ、よ……よろし……く……英 樹……です」
どもってしまった。まだうまく声が出ない。
また無視されるのか、また笑われるのか。
怖くなって、きゅっと体を小さくして律の背に隠れてしまった。
律は楽しそうに笑ってる。
笑うことないのにと、恨めしく思って声をかけようとしたら、前から声から聞こえてきた。
「おー。皇 玄よろしく」
「もう少し、愛想よくできないの? バカなの?」
「バカだよねー。照れちゃって」
「うるせぇ」
「あーあ。困ってるだろ。僕は南 涼。よろしくね」
何も気にすることなく二人は話しかけてくれた。
もしかして、大丈夫……?
そっと律の後ろから顔を出してみる。
ちょっと照れた顔と、呆れた顔と、楽しそうな顔が俺を見ていた。
「ね。大丈夫だったでしょー?」
「……うん。そ……そう……か……も?」
久しぶりに律以外と一緒に笑えたんだ。
この二人とは仲良くなれたらいいなって。
ちょっと思った。
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