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「今、ガラス窓を通り抜けましたよね?」
それを目にしても認めたくなかったのか、……彼女が僕の妄想であればそれも可能か、と思ったと同時だった。
「これは戦利品です」
そう言った彼女が手に持っていたものをテーブルの上に置いた。僕は双眸を大きく見開いてしまう。
二つの髪留め用の黒い輪ゴムだ。
僕はそれを見て不思議に思った事を声にする。
「輪ゴムもガラスを通り抜けたのですか?」
「はい」
と、彼女が口角を上げる。
「一体、どうやって……。もしかしてマジシャンだとか? 僕を騙そうとしています?」
「うーん。これでも信じてもらえないのですね……。仕方ありません、こうなったら奥の手です」
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