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プロローグ
僕に向かって、悪い男が近づいて来ている。
それは真夏の暑苦しい夜に見る悪夢の続きのようで、思わず後退りしたくなってしまった。
……けれど、ぐっと踏み止まる。
影のない彼女を泣かせたくなかったからだ。
今の状況を正確に伝えるなら、僕の背後にいる彼女の父親に向かって悪い男が襲い掛かってきている、と言うべきだろう。
僕は盾になるようにして、彼女の父親の前に立っていた。その為、このような状況になってしまっているに過ぎなかった。
その悪い男が右手に握っているのは、鋭利な刃物だ。
どうして、このような事態になっているのか?
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