15.秋分

1/1
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

15.秋分

 彼の人と酒酌み交わす秋彼岸  パン屋さえ花を商う秋彼岸  花よりも赤く恋よりも胸いっぱい  彼岸の月鈍く光りて誘いけむ  秋の夢ヤバかったのは若さゆえ  みずどりの羽根生え変わる冬備え  彼岸過ぎて川面の雲の昏きかな  目を伏せて秋のコートに顔埋め  雨止まずマリーゴールドときめきぬ  幻の秋の夕陽に集う者  秋のなぎさ平和に終わる世界かな  秋時雨流し目くれるマネキンや  冷たい雨マロングラッセ似合う街  雨風のコスモスなぶれど艶めきぬ  ガラス戸に映る秋空ラジオ消す  秋の夢波に揺られて薄目開け  空箱の香り楽しむ金木犀  石塔を温める術なき秋夕陽  十月は黄昏の国鍬洗う
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!