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――今日からサンタになってやる、とイイ大人が売り言葉に買い言葉で大勢の前で宣言しちまったわけだが。
勿論そんなことがそのまま実現するわけもない。俺は相変わらず警察官。相変わらずグレーな立場で活躍……いや暗躍する、今を全うするのに精一杯の頭の不出来な大人だ。
だが。
【田代】「……思い出せたよ。俺が、どんなガキだったか。どんな大人に、なろうとしてたかも」
俺の背中を爆風が押した気がした。
すると多少は立ってる世界も変わるもんなのだろう。
【少年少女】「「「…………」」」
今日から俺が配属されるのは、これまでとはまた異なるベクトルの、グレーな領域。
人々の目と耳には決して入らぬ場所で、俺はそいつらと顔を合わせる。
俺たちとは多重に線引きせざるを得ないらしい、規格外の子ども達。事情はそれなりに聞いている。
――10年前の俺と大体同じくらいの年齢らしい。だとしたら、あの頃の俺はきっと――
【田代】「(いや、違うな。俺はやっぱり、今を見て考えてればいい)」
今課せられた時間を全うする。与えられた仕事に全力を尽くす。
そして。
【田代】「――メリークリスマス、クソガキ共」
【少年】「今、冬ですらないんすけど」
【田代】「うっせえ黙って受け取れ大人の覚悟」
当たり前のものを与えられなかったお前達に、そのぶん全部を贈る。
――それが、大人になった俺の使命だ。
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