妬きリンゴ

3/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
   思った通り、先輩は戻ってこなかった。  焼きリンゴ、出来てるのに。  ひとりでアルミホイルを開きたくなんかない。甘い香りのリンゴを見たら、きっと私は嫉妬するから。  誰も、悪くない。ひとり隠れて甘くとろけたリンゴの柔らかさだって、悪くない。  アルミの上から軽く、指でつつく。このまま焼きリンゴはどんどん焦げて、誰にも気づかれないまま黒くなっていくんだ。  ごめんね、って両手を合わせる。いただきませんでした。  もう、妬かないから。  
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!