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そして、数日後、俺は樫山を美術展に誘った。
「樫山、俺と夢明は結婚するよ」
それは、壁一面が青い部屋で、それが芸術と書かれていた。まるで水槽に入ったかのようで、空気さえも水を含んでいるように感じる。
「…………俺と別れるの?」
樫山が、吐き出すように言った台詞に、俺は過剰に反応して樫山を見た。
「ソコ!そこが問題!付き合っているのだ、多分、俺達」
それなのに、手も握らないというのは、どんな了見なのだ。俺が樫山の手を握ろうとすると、樫山の手が逃げた。人前で困るというのもあるが、今、ここには俺達しかいない。
「手も握らない」
「…………触れたら、もう止められない。全部、占領したくなる…………」
泣いているような樫山の声に、俺はまじまじと溜息をつくと、両手を伸ばした。そして樫山を包み込むと、キスしておいた。
すると、樫山が静かに俺の腰と頭に腕を伸ばしてきて、きつく抱き締めて、キスを返してきた。
「いいの?…………どんどん、違ってくるよ」
尻を揉まれて恥ずかしいが、変わらないと進めない未来もある。
「いいよ…………」
俺達は未来に進むのだ。
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