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 ソファーにもたれてテレビを観ている横で、すやすやと寝ている黒い毛むくじゃら。距離は未だに二メートル。ただ、前ほどこちらの動きに過敏な反応はしなくなってきた。毛むくじゃらが来て四ヶ月目。距離は縮まらないが話しかけたりはしている。 「そろそろ塾から帰ってくると思うよ?」  嫁が娘を迎えに行っているのだ。留守番一人と一匹。犬はダランと寝そべったまま耳だけパタパタ。 「ん?」  よくよく見ると犬が寝そべっている下にあるのは俺の服。どうやら帰宅してからソファーに掛けて忘れていたのが落ちたらしい。 「皺になるじゃん。毛もつくし」  大きく尖った耳は言葉を掬うように今日もパタパタ。  未だに臆病な癖に顔はシェパードに似てきて少し凛々しい。結構、美形な雑種ではないだろうか。いや、見慣れてそう感じるだけかもしれないけど。  そこに車の音がして犬が、さっきまでのだらけきった態度は瞬時に消え去りシェパードよろしくしゃきっとした顔でお出迎え。尻尾をブンブンふるあたり、流石は犬といったところか。いやまて、猫も出迎えるとき尻尾を振っている動画を見たような。
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