ボーイ・ミーツ・ガール・オブ・ザ・デッド

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「極微な地球外生物が筋組織のタンパク質を栄養素にし個々の細胞に寄生し変異させる症例で、死後硬直近似な性質は言わば細胞が一旦サナギになって外殻化し静止状態を保つのに似ています。病原体が乗っ取った細胞一つ一つが個々の生命体として存在し、その連結を維持する為に人間の運動機能が必要で、不必要な心肺機能を停止させます。死者が動いて人を襲うのは栄養と増殖先を求めるからです」    僕の検査をした特務機関の医師は教えてくれた。肉体の筋組織が侵されず心筋が感染し内臓機能が泡沫化した彼女は類を見ない特殊例であり、それが他の腐乱死体のまま活動する異形な怪物(zombie)と違い外見が著しく変容していない理由らしい。 「彼女は生きているんですか?」  僕は縋るように聞いた。 「厳密に言えば死んでいます。素の彼女だったのは脳の一部だけです」  死体の脳の中で彼女の心が生きて僕のことを記憶しているらしい。 「究明の為には人を襲わない彼女が唯一反応する貴方が側にいる必要があります。寄生生命体から細胞を取り戻す治療の鍵は彼女と貴方なのです」
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