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男心
「好きです!付き合ってください!」
夕焼け色に染まる校舎の中で俺、田中智は初恋の子に告白していた。
きっかけはふとした事だったが、俺の心には簡単に恋心は芽生えてしまった。
そして今、一世一代の告白、初恋であったこともあって俺の顔は真っ赤なはずだ。
「……ごめんなさい、私好きな人がいるの」
淡々と彼女はそう言った…まるで“貴方は最初から眼中にないの”と言っているかのように……
「そっか…じゃあ誰が好きなの?」
だったら、好きになるまでアタックすれば!!
「……斉木君よ。」
よりによってあの斉木か!!
頭よし、顔よし、性格良しの学校一の美男!!
俺とアイツでは月とスッポン、天と地の差がある。
いとも簡単に振られた、俺の恋心は芽生えたのはいいが儚く散っていった。
俺は、失恋した痛みと悲しみをどうにかする為
人があまり来ない公園にきた。
……もし、仮に泣いたとしてもここなら誰にでも見つからない。
俺は、スマホにイヤホンをセットして曲を聴き出した。聴いた曲のジャンルは失恋ソング……
この失恋ソングの名前は確か…“Ren”……
かなり有名な失恋ソングだ。有名ってあるだけでこの歌の歌詞を聴くと心にとても響く……
我慢…我慢だ、男が泣くんじゃねえ……
そうんな感じで涙腺と戦っていると……
にゃーん
後ろから猫の鳴き声がした
「肉饅!お前そこにいたのか!?
可愛いなぁ、お前は……」
肉饅は俺の家の近くで良くうろついている野良猫だ。小柄な猫で真っ白な毛並みのコイツはとっても柔らかくて肉饅見たいだからそう名付けた。………決っしてお腹が空いていた訳ではない……。名付け親になったせいか、余計にコイツが可愛くて可愛くて、とても愛着が湧いた。
そう言えば彼女も猫好きだっけ……?
彼女の事をまた考え出したせいか、さっきまで我慢していた涙が目からこぼれ落ちてきた。
やっぱり、痛い。痛いものは痛い。
外傷とかじゃなく“心の傷”だから余計に痛く治しづらい。
にゃーん
肉饅がまた鳴くとどこかに移動しようとしていた。
「あっ…肉饅どこに行くんだ?」
肉饅が向かう先を見ると……かなりイカついおっさんがいた……しかも強面だ……あれ?もしかして、同じマンションの横山さんか?
同じマンションの横山さんは見た目通りとても怖いため、“ヤのつく職業”をやっていると噂されている。どれが本当なのか本人しか知らないが……
俺はそもそも、いつも怖すぎて顔を正面から見ることがまず無かったし…遠くから見るとよく分からないが近くで見るとやはり横山さんである事がわかった。
肉饅があんなに懐いてるけど……本当は悪い人じゃないのか?
そんな事を考えているといつの間にか横山さんが、俺の目の前にいた。
「おい、坊主……」
「はっはい!」
こえーーー!何で急に話しかけてくんの!横山さんやめてくれ!
「……何処か痛いのか?」
「え?」
「泣いた後があるし……何処か痛めたのかと思ったんだが……その様子じゃ違うんだな」
「」
びっくりしすぎて声も出ない……
横山さんって………そもそも喋るんだ!!
マンションで会う時は一言も喋ってないし……
しかも、俺の事を心配してくれるなんて!!
この人、見た目が強面なだけで優しいかもしれない説あっているかもしれない!!
「何か嫌な事あったのか?」
「えっと………あのね?……」
それから、俺は心に溜め込んでいた事を横山さんに打ち明けた。
告白して振られた挙句、好きな人の想い他人が俺じゃ勝ち目がない“イケメン”だと言う事を……
「……そうか………大変だったな」
ポンポン
横山さんが自身の大きな手で頭を撫でてくれた。
「なぁ、坊主……人間がモテる上で一番大切な事は何だと思う?」
何だろう……今までそんな事考えた事なかったから全然分からないや…
「えっと……頭の良さ?」
「答えはな“中身”だ」
「中身?」
「あぁ、例えばだぞ、目の前にとてつもない“美人”がいるとする、しかし性格は最悪。
そんな女に誰が惚れる?普通ならいねぇ筈だ。結局、人間はな、“性格の良さ”と“相手を思う気持ちがどれだけ誠実で強い”のかによって決まる空っぽな中身の人間はな、好きにすらなってもらえねぇからな。坊主、お前は相手の事を思い出して泣ける男だ!顔が負けていたとしても“中身”では負けてねぇから、チャンスはある!
やるだけ、やってみろ!」
横山さん……
「横山さんありがとう!!俺頑張る!
そして、あの子に絶対好きになってもらうんだ!」
「あぁ、その意気だ、頑張れよ坊主。
……さてと俺は仕事があるからそろそろな……」
「そっか、横山さんまたね!」
「あぁ、またな。」
そして、僕の話を聞いてくれた横山さんは公園から去って行った。
カッコいい!!俺も横山さんみたいに誰かを颯爽と助けれるような人になりてぇ!!
ブルン!ブルルン!
車のエンジンの音が遠くからする……
目の前に車が見えてきた。
見た感じ横山さんが車に乗っているようだ。
車の窓を開けているようで音が漏れている。
いったい、何の音だろう?
まだ、遠くに車があるためハッキリ聞こえない
少し近づいてくると音が聞こえた。
どうやら音楽のようだ。
横山さんっていったい何を聞くんだろう?
俺から車までもうすぐ…
俺はとても気になったため聞き耳を立てた。
♪~~
俺はこの曲を聞いて何の曲か分かった。
なーんだ、横山さんも仲間だったんだ!
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