3人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
ーーーーちくしょう、あと少し……あと少しだってのに。
何かに追われるように駆けるその影は、ぼろぼろの衣類をまとい、乱れ切った金髪をばさつかせた、どう見てもまともな暮らしをしているとは思えない、女性だ。
裸足も同然のその足は、なにか鋭利な刃物で斬られたらしく、少なくはない量の血液で、川を作り出している。
ーーーーあたしが甘かった。目標まであと少しって所で、あんな橋に手を出して……。
女性は思いを巡らしながら、血を流す足を引きずるようにして、駆ける。
それを見て、思う。
この血の跡を、ヤツは確実に追ってきているだろう。ここまで逃したのは、捕まえた獲物にとどめを刺す前の、ちょっとした戯れというやつか。
そう思い至り、女性は歯噛みする。
だが、ふと、女性の瞳に強い光が宿った。
ーーーーすべて、あんたたちの思うとおりにはするもんか。
しかし、駆けるその足は徐々に遅くなり、やがて、彼女は不意にがくりと膝をついた。
最初のコメントを投稿しよう!