第1章 春・乱・漫!

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春。 桜の花が満開で、少し強い風が吹いている並木道。先週までは5月並みの暖かさだったのに、今は少し気温が下がって、夜になるとちょっと冷え込む今日この頃。 美容室の壁が一面透明な窓ガラスになっていて、そんな桜の花が舞う景色が見えて、あたしは外の景色に見惚れてしまっていた。すると、あたしの肩からケープが外されて、 「はい。完成です。鏡、持っててください。どうですか?こんな感じに仕上がりましたが」 と美容師の戸坂(とさか)さんが微笑んで言いながら少し大きい鏡を持ってきて、あたしは手鏡を受け取った。 「おっ」 あたしはそう言って鏡に映る自分を見つめて、右を向いて、左を向いて、少し斜め上に顔を向けたり、下を向いたり。 「おっ。いい!!イメチェン?いい感じに成功!」 「でしょ?俺も満足!光莉(ヒカリ)ちゃん、この髪型似合うよ」 「えへへ。戸坂さん、褒めるの上手〜」 「だって、光莉ちゃん。大人になったよね。綺麗になったよ。だから、磨き甲斐がある。フルメイクもしてあげたくなるなぁ」 「やだ、あははっ」 小さい頃から通っているこの美容院は、あたしもお母さんも慣れていて、店員さんみんなと仲良く話せるフレンドリーな美容院だ。 今日あたしの担当をしてくれているのは、戸坂さん。戸坂(しん)さん。あたしがここに来るようになった頃は新人だった戸坂さんも、今では店長となって、イケメン店長として人気が高い、とか。さすがだ。
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