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song1
何度コールしてもお母さんは電話に出なかった。
「いい加減諦めろってば」
「嫌だよ。あり得ない。なんで私が夏希くんと……シークレット・ストーリーのメンバーと暮らさなくちゃいけないの」
今10代を中心に爆発的な人気を誇る高校生バンド、『シークレット・ストーリー』。
実の兄がそのメンバーの1人、だなんてとてもじゃないけど誰にも言えない。
バンドデビューをしてからというもの、夏希くんは実家である相内家を出てシークレット・ストーリーのメンバーと一緒に生活を始めた。
作詞作曲をしたり、スタジオで音合わせをする時、そっちの方が何かと便利だから、というのが理由だった。
実のところ、夏希くんが高校生の身分ながら早々に実家を出た事に私は内心安堵していた。
していた、のに。
「大概の女子なら大喜びする所なんだけど」
形の良い眉を寄せて、夏希くんは時計を確認する。
普通の男の子がそんな発言すれば反感ものだけれど相手は夏希くんだ。
本気でそう言ってるし、実際、現実はその通りなのだから何も言えない。
妹の私から見ても、夏希くんは整った綺麗な顔立ちをしている。
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