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プロローグ
ギターのサウンドに身を沈める。
★★★
言葉を失った。
「……な」
「おかえり、みのり」
「なんで、夏希くんがここにいるの……!?」
私に指さされ、問われた夏希くんは平然と返す。
「なんでって。ここ、俺ん家だし」
確かに。ここは相内家。私の生まれ育った家で、私の双子の兄である夏希くんの実家でもある。
「いや、そうだけど。ううん。違う。そうじゃなくて」
「何テンパッてんの、みのり。それより喉渇いた。あれ作ってよ。みのりお手製はちみつレモンソーダ」
「あ、ごめん、今レモン切らしてて……じゃないよ! 夏希くんここに1人で来たの? もしかして誰かに見られたんじゃ」
「大丈夫。マネージャーの白橋さんに送ってもらったから」
ご所望のレモンソーダが出てこないと知った夏希くんは「なんだ。つまんねぇの」とひとりごち、ダイニングテーブルに頬杖をついてテレビのリモコンを弄った。
「本当? 本当に、誰にも見られてないんだね? 絶対?」
「俺がそんなヘマする訳ないだろ。みのりじゃないんだから」
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