episode I

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「雫さん!いらっしゃいです!」 「りんさん!お久しぶりです!」 私たちは手を繋いで倉庫へ足を運んでいた。 「今度こそトランプしましょう!」 「はい!しましょ!」 「総長は強制参加ですからね!」 りんさんがそう言うと翔太さんは嫌な顔してたけどソファーから立ち上がってこっちへ来てくれた。 「ゲッ、」 一緒にしていた仲間から引いた途端りんさんの顔色が変わった。 「お前なー、わかり易すぎ。」 「そ、そ、そ、そんなことないっすよ総長。」 「ふふっ、声まで震えてるじゃないですかりんさん!」 つい面白くて笑ってしまった。 次は翔太さんがりんさんから引く番だ。 「お前なー、そんなに見つめたら分かるだろ?目ぇ、瞑っとけ。」 「はい!」 ぎゅっと瞑ったりんさんから翔太さんはババを引いてしまった。 「よっしゃー!!」 「うるせーなー!動いたのバレバレだろ!」 「ふふっ、あははっ!」 こらえこれず笑う私を見てその場にいたみんなが固まった。 「こんな風に笑うんだな。」 嬉しそうに翔太さん言う。 「翔太さんさえいなければなー!」 そんなことを口々にみんな言う。 その場がわーっと盛り上がった。 そんな中私はふと我に返った。 私……まだ笑えたんだ。いや、笑うんだ。 もう笑えないかと思ってた。というか笑っちゃいけないと思ってた。 「雫……?」 「翔太さん……私……まだ笑えました。」 「俺がいつでも笑わせてやる!」 そう言って頭をポンポンと撫でてくれる。 「雫……学校って行ってるか?」 「ドクターストップかかってるから行けない。そもそも行きたくないし……。」 「じゃあ倉庫に泊まってくか?」 「泊まれるの?!」 へぇー今どきの暴走族って泊まれるんだ? 「家の事情で帰れないやつもいるからな。」 「あっ、色々あるんだね。うん!泊まる!」 色んな理由があるって事忘れてた。 いいことではないよね。というわけで私は聞かないことにした。 「うわぁー、広ーい!!」 ーバフッ 私はベッドにダイブした。 ふかふかしてて気持ちよかった。 「ふっ、ガキっ、」 「んなっ!ガキじゃないもん!」 またガキって言われた……。 私ガキなのかなぁ? でも一応高二なんだけどな……。 そういえば……翔太さんって何歳なんだろう? 「ねぇ、翔太さんって何歳なの?」 「俺?俺は21歳だぞ?」 えっ?21歳!私の4個上なの? 「19とか思ってた。」 「褒めても何も出ないぞ?」 「いやいやほんとに!」 笑ってる翔太さんは本当に21歳には見えなかった。 「じゃあ大学生?」 「あぁ、3回生だ。」 「じゃああと1年なんだ?」 「そうなるな。」 なんだろう?一気に元気じゃなくなった。 顔に影がかかった。でも一瞬だった。すぐにいつもの翔太さんに戻った。 「いいからもう寝ろ……」 「はぁーい……。」 私は大人しくベッドに入る。 いつもなら全然寝れないのに、翔太さんが隣にいるだけで睡魔が襲ってきた。 そして私はそのまま眠りに入った。
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