episode I

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episode I

閑静な住宅街の一角にある普通の一軒家に住む私、(ひいらぎ)(しずく)は1人幻聴と闘っていた。 『死んじゃえばー?』 『キエロ、キエロ』 色んな言葉が頭の中でこだまする。 思わず叫びたくなることをぐっと我慢し、膝を抱えゆらゆら揺れていた。 ーコンコン、 扉を叩く音がし、振り向くと寧夏(しずか)おばさんが立っていた。 「雫ちゃん、具合はどう?」 「大丈夫です。」 私はにっこりと笑う。 するとおばさんは辛そうな顔をして「そう」と言い部屋を後にした。 私は辛ければ辛いほど笑う。 だって笑っていればなんだって大丈夫でしょ? 私は周りから見れば普通の人間だ。 でも少し違うところがある。 それは心の病気を持っているかいないかの違いだ。 そう私はいわゆる精神疾患なのだ。 私の病名は統合失調症という病気。 これは100人に1人の確率でなると言われてる精神疾患からしたら多い方の病気だ。 主な症状は幻覚、幻聴、不眠、記憶力の低下、 意欲の低下、など人によって症状は変わってくる。 私の場合は、幻聴、不眠、妄想、が主だ。 最近フラッシュバックも酷くなってきた。 そんなこんなで1人幻聴と闘っていたらいつの間にか、外は暗闇と化していた。 「そんなに時間経ってたんだ……」 ーキィー、 扉を開けるとそこには夜ご飯が置いてあった。 寧夏おばさんが置いててくれたのかな? それには手をつけず私はリビングへと降りていく。 トントンと階段を下りる音に加えいつも私の頭の中には声が響いている。 『早く死ねば楽なのに』 『消えろ』 『お前のせいで……』 ほんとにうるさいなぁ そう言いたくなる。 でもまるで私の心の中の声を表してるかのようだった。 そう私のせいで……。 私が生まれてきたから…。 どこから間違えたのか…生まれてきたこと自体間違っていたのか…今の私には判断はつかなかった。 リビングへおり、時計を見ると日付をまたぐ10分前、23時50分だった。 もうおばさんは寝てるだろう。 飲み物だけのみ、玄関へ向かう。 そして外の世界へと飛び出す。 闇の世界へと…… 私には光の世界には居られないみたい。 こうした闇の世界くらいがちょうどいい。 朝や夕方になると学生や社会人小学生で賑わう住宅街も人一人っ子いない闇へと化していた。 こうして1人で歩いてるとなんだか少し幻聴も良くなった気がする。 聞こえるけどはっきりとは聞こえない。 やっぱり私には外の世界がちょうどいいみたい。 誰にも縛られていないこの感じが…。 「おいっ…」 「……」 「おいって…」 ーグイッ!? 「きゃっ……」 突然肩を掴まれ視界が反転する。 「あっ……悪ぃ……。」 「居たぞー!あそこだー!追えー!」 「やべぇ……逃げるぞっ!」 「えっ…ちょっ……」 ーパシッ 手を握られ、急に走り出す。 急な展開に追いついていない私はなるがままだった。
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