あの白い雲を君は追いかけていった

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「毎日、絵描いててよく飽きないね」 左後方からやんちゃそうな声がして振り返ると、坂井勇介が窓から声をかけてきた。西日が眩しい。逆光で顔がよく見えなかったけど、はにかんだ笑顔で私を見ているようだ。 「そちらこそ。毎日野球やっててよく飽きないね。あんなに大きい声出して、よく喉痛くならないね」 私は皮肉を込めて返したが、全く悪い意味で受け止めてはいない様子で 「ま、慣れてるからな。訓練の成果だよ」 また、はにかんだ笑顔でそう言った。汗が目に入ったようで、タオルで顔を拭う。  同じクラスの坂井君は、野球部に入っており、怖くて誰もやりたがらないからという理由でキャッチャーをやることにしたらしい。 以前帰り道が、一緒になってそう教えてくれた。 クラスでムードメイカー的な存在だけど中心に立つのは苦手なタイプのようだ。キャッチャーとしてやっていけるのかな、と私は内心思っていた。 「私だって慣れてる。毎日の事だもん」 私は、キャンバスに向き直そうとした時、 「おい!」 坂井君が缶ジュースを私に投げて渡した。 「ナイスキャッチ!」 坂井君は、グーサインをしてそのまま練習に戻っていった。 私は驚いて心臓が飛び出るかと本気で思った。 「お~!!」 美術部の皆が私を見て、早速冷やかそうとする。顔のにやつきで、これから何を言うのか容易に想像ができる。 私は自分でわかるくらいに顔を赤くするも、椅子に座りなおし平静を保った 。
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