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桜の知らせ
空は雲1つなく、日差しが部屋を暖めてくれる。
まだ夏になっていないというのに日差しが差し込むと十分半袖で過ごせる様な陽気だ。
その陽気には一見不釣り合いに見える物が先ほどから注いでくる。
しかし、太陽光に反射されまるでそこに佇む人を明るく照らす照明の様だ。
そこまで考え、ふと私は気温の変化についていけず頭が狂ってしまったのかと自嘲した。
もちろんもしそうだとしても目の前の人が綺麗に見える分には構わないのだが。
だがそろそろ声を掛けた方が良いだろう。
「美愛さん、もしかしてちょっと疲れた?」
私が声を掛けるとそれまでぼーっと外を眺めていた美愛さんははじかれた様に部屋の中に居る私に目を向けた。
「いいえ、大丈夫よ。セレナに心配をかけてしまうなんて、ごめんなさいね。」
美愛さんの心配なんていくらでもするのに。そう思ったが作業が進んでいないのも事実だ。美愛さんはとても用心深く自分のやるべき物を他の人に見せる事を基本的にはしない。その結果美愛さんの作業量は膨大になるのだが本人は弱音1つ吐かない。
私にくらい言ってくれても良いのに。
「でも、そうね今日はここまでにしましょうか。みんな付き合ってくれてありがとう。」
美愛さんのその言葉で部屋に居た5人全員が立ち上がった。
急いで帰る準備をし、美愛さんのところへ飛んで行った。
「セレナは後でもう少し手伝って貰ってもいいかしら?私の部屋でって事になるけれど…。」
「もちろん!!遠慮しないで!!」
美愛さんは私にだけ資料を見せてくれて手伝って欲しいと頼んでくるのだ。私はその事に優越感を感じている。
みんなが部屋から出たのを確認し、忘れ物がないかチェックをしてから美愛さんが生徒会室の鍵を取り出した。
もうすぐある入学式が上手くいきますように。
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