11.独身30日目

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「あっ」  トンダ食堂のキッチンカーに並んでいると、後ろから女性の甲高い声がした。びっくりして振り返ると、同じ部署の加藤さん(トンダ食堂とイチオシしていた彼女だ)が青ざめた顔で水筒とお財布を脇に抱えていた。 「こんにちは……」 「いやいや、さっきまで一緒に働いてたよね」  じりじりと後ずさる部下。慌てて私は首を振る。 「えっ、別に、あの、あの件があったからトンダ食堂さんへ社員は出禁とかないから、大丈夫だよ」 「は、はあ……」  部下は不服といった態度で私の後ろに並び直した。  相変わらずこのキッチンカーは大繁盛のようで、自分の前に五人くらい。部下の後ろにもあっというまに人が並んだ。 「部門長もここのとんかつ弁当、召し上がられるんですね」 「ああ」 「なのに、手を引けっていったんですね」 「……すまない。色々あったんだ」 「いいんです、別に」  部下は頬を赤らめて見上げた。 「店長さんに申し訳なくって」 「どうした」 「いえっ、なんでも」  ぷいっと部下は横を向いた。そうしているうちに自分の番になり、比佐がにこっと私に笑いかけた。 「オリジナルカツ弁当ひとつ」
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