まほろばのあなた

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小学生の僕には、いつも助けてくれる『はるちゃん』がいる。 見た目は30歳くらい。 初めて会った時は僕が道に迷って泣いていた時だった。 「ありがとう、おばちゃん!」ってお礼を言ったら悲しい顔をされて、 ならばと思って「お姉ちゃん」って呼んだら 「私はあなたのお姉ちゃんじゃないよ」 って言われた。 「じゃあ何て呼べばいいの?」 と聞いたら 「はるちゃん、がいい」 って返ってきたから、それからずっと『はるちゃん』って呼んでる。 『はるちゃん』は僕が困っている時に現れる。 幽霊とか天使とかじゃなくて、ちゃんと普通の人間なんだけど 僕が助けを求めた時に必ず現れるから、一度 「どうしてはるちゃんには僕のピンチが分かるの?」 と聞いたことがある。 でも、『はるちゃん』は何も答えてくれなかった。 その答えがわかったのは、俺が高校生になった時。 高校に入って、初めて出来た彼女と下校途中 偶然『はるちゃん』に会った。 『はるちゃん』は俺を見て微笑んだ後に居なくなってしまったけど、 それから暫くして彼女からこんなことを言われた。 「あの人、いつも私達のことを付けてて気持ち悪い」 そう、『はるちゃん』はいつも俺のことを近くから見ていたんだ。 そこから彼女とはぎくしゃくし始めて、 それからも『はるちゃん』のストーキングが無くならなくて とうとう彼女に振られてしまった俺は 次に『はるちゃん』に会った時に苛立ちをぶつけてしまった。 「どうして俺の小さい頃からいつもいつも……。 迷惑だからもうストーカーは止めてくれよ!」 そしたら『はるちゃん』は「ごめんなさい」と言って涙を流すと、こんなことを話し始めた。 「私には将来を約束していた幼馴染がいたの。 小さい頃からいつも私を守ってくれて、 高校を卒業した時にはプロポーズもされた。 でも、彼は……死んでしまったの」
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