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1話 厚かましいんだよ!
その日の朝は、雲ひとつない清々しい朝だった。
体育の授業だろうか、自分と同じように運動場を走る子どもたち。
黒田 美咲。三十六歳。専業主婦。子なし。夫や義家族との不和で離婚秒読み。
最近の悩みは増えた体重が落ちないこと。
その為、美咲は一ヶ月ほど前からジョギングをしている。
小学校を通りすぎ、橋を渡れば、海を埋め立てて作った広い人工島にたどり着く。その人工島をぐるりと一週するのが毎朝の日課だった。
「はぁ、はぁ、は……つら……」
何だか今日はやけに息があがる。いつもならまだまだ大丈夫なのだが。
「──!!! ぐっ、くっ……!!」
(胸が……──っ!)
胸がギュウと締め付けられる。
(──っ!)
目の前が白くなり、意識が遠のいていく。
(──だめっ! まだ死にたくない。あのアニメの最終回を見るまでは……っ! ダメっ……姪っ子が楽しみにしているのよ……っ)
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