目撃者たち

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目撃者たち

「彼女に子どもできたんだ」 師走に入り忙しいのはどこも同じだ。自分が一番忙しいのではないかと勘違いしそうなほど忙しかったせいで幻聴が聞こえているのか… 目の前には2年間付き合っている見慣れた彼。彼が言う‘彼女’って…私、妊娠してませんけど? 「夕月?聞いてる?」 「…」 頷きながら‘ゆづき’と自分の名前の余韻を耳に、もしかすると彼の言う‘彼女’が自分でないのかと。 「…彼女って?誰のこと?何の話?」 「斉藤芹那」 サイトウセリナ…は私ではない。私は神戸夕月(かんべゆづき)だもの。 「…わかるように説明して」 「うん…夏に3週間ほど会えない時があっただろ?」 私の出張と彼の出張、そして互いの帰省で8月にはほとんど会っていなかったと思う。それが? 「盆休み前に会社の納涼会があったんだよ」 それは聞いてたけど? 「その時に飲みすぎちゃって、俺…記憶がないけど、起きたら…まあ…その形跡はあちこちにあったわけだ」 「…斉藤さんと寝た、と?」 安っぽいドラマのようなストーリーが身に降りかかることってあるんだね。
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