1

1/16
86人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ

1

今日何度目か分からない溜息を零す。 仕切られたデスクの隙間から、向こう側を覗く。三年先輩の宇都さんの後ろ姿。営業の松村さんから頼まれたコピーを取っている様だ。 胃がキリキリ痛む。卓上カレンダーを見たら十七日だった。 宇都さんが私にブチ切れた日からもう三日経つ。その間、全く口を聞いてもらえなかった。男性社員はともかく、他の女子社員はとうにその険悪さに気づいていて、「どうしたの? 喧嘩?」なんて言われる始末。しかも、宇都さんが詳細を語ったのかどうか定かじゃないけれど、「早く、謝った方がいいんじゃない?」と同期の金田えりにはそんな助言すらもらった。謝る事は簡単だ。これでも大人だもの。社会人だもの。理不尽な思いなんて会社で幾度も経験している。 でも、と思う。 こればっかりは、どうも納得出来ないのだ。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!