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「まさか検疫に引っかかってしまうとはね」
「まったくですよ。明日は仕事なのに」
事務所のパイプ椅子に腰掛け、二人の男性が笑っている。
彼らが持ち込んだのは小さな双葉。
どぎつい紫色の混じった植物は新種の可能性が高かった。
「ポケットから出てたなんて、驚きですよ」
「私はリュックの脇から。どこから入り込んだんですかね?」
種類を選別しようと島の研究所に電話するも繋がらない。
「今日は霧で視界が悪かった。天気予報では晴れだったのに」
「そうそう!昨晩、ホテルの近くで何か落下したそうで。噂では隕石とか…」
バキッ…メキメキ…
奇妙な音に顔を上げる。
彼らが腰掛けていた席には紫の葉を茂らせた樹が二本。
先端についた無数の花が今まさに霧状の花粉を撒き散らすところであった。
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