1,季節外れの引っこし

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「僕は、新しい場所でも……うまくやっていけるのか」 「大丈夫だ。もうお前は中学生だろう。でも何かあったらすぐに俺に言いなさい。分かったな?」 父さん、月読刹那(せつな)社長は見た目はきびしいけれど心優しい。 お母さんを失ったショックで変わってしまった。 ハードボイルドな感じのハンサムな雰囲気になってしまった。 「うん、約束する」 「よし。いい子だ」 もうすぐで新しい家につく。 六月という中途半端(ちゅうとはんぱ)なときに転校するのだから。 新しい家はもちろん広く、テレビやゲーム、本棚や書斎(しょさい)もついている。 まさに夢のような家だと大家(おおや)さんから聞いていた。 「ねえ、父さん。幽霊って信じる?」 「ほう……。急に何を言い出すかと思ったら。そうだな」 僕は少し気になっていた。 もしかしたら、いじめの原因は僕ではなくの問題ではないかと。 父さんは強くハンドルを握りしめて、きっぱり言った。 「ああ、信じるさ。世の中は不思議なことだらけだ」 「そうだよな。変なこと聞いてごめんなさい」 僕がしゅん、とうつむくと父さんは笑った。 「たしかにホラーやミステリーなどを扱う仕事もあるが。ゲーム会社の社長としてじゃない、俺自身の意見だ」 やっぱりカッコいい。 僕は将来、父さんみたいな立派な人になりたいと思っていた。
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