君と約束・・・

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君と約束・・・

喧嘩じゃ負け知らずだった不良、腕っぷしに自信があったトラック野郎、ボクサー、総合格闘技のプロ・・・警官etc ドウンに挑み、土人形にされてしまった彼らは微かに意識の中、苦悶の表情でノーキン達に襲いかかる! 「また、あの胸糞悪いスキルで人々を・・・貴様だけは絶対に許さん!」 怒りの戦斧が哀れな土人形達を薙ぎ倒す! 「兄者の敵は、私の敵・・・消え去るが良い外道!」 剣に炎を宿し、チテキーはドウンに斬りかかる! しかし、ドウンはそれを大鉈で受け止める! 「あひゃぁー!熱いねぇ、だがなぁ~お前らが護ろうとしてる俺の妹・・・レウォンだって、何人も殺してるんだぜぇ?」 レウはドウンを前に、畏縮しており戦える状態では無い。 心は兄との決別を誓ったが、身体が生前の恐怖に竦み上がっていた。 「それがどうした?兄者が護ろうと言うのなら、私には一片の迷いも無い!」 ドウンの揺さぶりを意にも介さず、チテキーは舞うように剣を振るう! 「フン、お行儀が良い太刀筋だなぁ?生ぬるいぜぇ!」 剣を受け止めると同時にドウンはチテキーに蹴りを入れる! 腹を蹴られ、チテキーは思わず踞る。 「どぅーん!」 嘲笑しながら、追撃しようとするドウンにチテキーは笑みを浮かべて尋ねる。 「が熱そうだな?」 「あひゃぁー!?」 ドウンの脚が炎に包まれ、燃え盛っている! 「て、てめぇ!身体に炎をチェインさせてたのか!?小賢しい真似を!」 近くにいた土人形を掴みあげ、泥にして脚を覆わせ火を鎮火するドウン。 チテキーも当然レベルアップしており、クルスや弓子のようにチートスキルで全身にチェインさせる事は出来ないが武器だけで無く、防具にもチェインさせる事ができるようになっていた。 ノーキンは斬っても斬っても元に戻る土人形達に舌打ちをする。 「チッ!やはり、斬撃ではすぐに元通りか」 あと一人でも、加勢してくれれば・・・そう思いながらレウをチラッと見るノーキンだったが、震えている彼女に加勢は望めそうに無い。 「サーチィ殿、聞こえるか?近くにいる者を加勢によこしてくれ!」 『了解です!』 サーチィに頼み、ノーキンは引き続き土人形と戦闘を続ける。 何体か、動きが良いのが混ざっている・・・油断はできん! アイツ(ノーキン)がいる限り、土人形は俺の加勢に来れねぇ・・・だが、逆もしかり。さっき見かけたなら、切り札のレギオンが使えそうだ。 ここで、ドウンがとった行動は・・・敵前逃亡! 「貴様、逃げる気か!?」 チテキーは逃げるドウンを追いかける! ドウンが逃げた先は・・・外国人墓地だった。 「・・・墓場だと?」 「もしかしてしてるかぁ?日本って土葬禁止だろ。火葬だと土人形に必要な骨が手に入らねぇワケよ。でもなぁ・・・宗教的な関係で土葬の墓地があるんだよぉ・・・それが此処だどぅーん!」 次々と現れるゾンビのような土人形達をドウンは自らの身体に取り込んでいく! それは、ドウンを中心とし、全身に苦悶の表情を浮かべた巨大な人の形となった。 「で、でかい・・・二階建てくらいはあるのか!?」 二階建ての家屋は大体9m前後・・・ドラゴンと比べれば小さいが、チテキーから見れば相手であった。 「どぅーん!チートスキルもマスターにより強化された『レギオン24(Easy Death)』!!その名の通り、24×2=48手による驚異の連続攻撃が可能!」 追う側から、追われる側となりチテキーは全力で来た道を戻る! 「なんだ、土人形が消えた?」 レギオン24を発動させた為、今までの土人形は解除され土に還った。 「兄者ぁー!!」 チテキーの叫び声に振り返るノーキンが見たモノは・・・前回以上に禍々しくおぞましいレギオン24の姿! 「どこまで死者を愚弄すれば気が済む!」 「どぅーん!てめぇらも、レギオンの一部にしてやるぜぇ・・・あひゃぁー!!」 身体から伸びる無数の腕がノーキン達に襲いかかる! 「レウ、自分の身を守れ!」 ノーキンもチテキーも、レウを護る余裕は無い。 しかし、レウは動く事が出来ずにいた。 レウの手足をレギオン24の腕が掴み、取り込もうと蠢く。 「嫌・・・コメマル!」 レウがコメマルの名を叫ぶと共にベースから放たれた音撃が、レギオン24の腕を爆散させる!! 「きたねぇ手で、俺のレウたんに触るんじゃねぇ!!」 ヒーローのように登場したコメマルにレウは涙を浮かべて抱きついた。 「コメマル・・・会いたかった」 「そりゃ、こっちの台詞だよ・・・」 抱き合う二人を見て、ドウンは怒り心頭に発していた。 「な・に・がぁ~俺のレウたんだぁ~?それは俺のだ!」 再び無数の腕を伸ばし襲いかかるレギオン24!! しかし、モカヒンのギターから放たれた音撃が! パーサのフランベルジュが! ビソンのフレイルが! 二人にレギオン24の腕を寄せ付けない!! 「空気読めよ、化け物野郎」 「レウォンを見つけたら、さよならするつもりだったけど・・・コイツ、ムカつくよなビソン?」 「そうだな、パーサ。コイツを片付けてからにしよう」 レギオン24の腕をノーキン、チテキー、モカヒン、パーサ、ビソンが破壊し続ける! しかし、破壊しても破壊しても腕はすぐにレギオン24の本体から現れ続ける! 「てめぇら、ダークネクロスなのに俺とやる気かぁ!?」 「気に入らない奴はさぁ、ぶちのめすんだよ!」 「そういう訳だ」 仲間達が戦っている中、コメマルはレウの震える身体から身を離す。 「やっぱ、酷い目に合わされた相手を前にしたら怖えよな?後は俺達に任せてくれ」 しかし、レウは首を横にする。 「もう大丈夫。コメマルが一緒なら怖くない。だって、負けないってわかってるから」 「そうだな、愛は」 「勝つ、もんね」 微笑み合う二人にモカヒンが声をかける。 「そろそろ良いかぁ!?」 「わりぃ、待たせた。いつでもイケるぜ!」 レウも影から分身を二体生みだし、ノーキン達に加勢する! 「ぬ・・・やれるか、レウ?」 「足を引っ張ってすまなかった」 レウを気にかけるノーキンにレウは軽く頭を下げた。 プレーヤーとダークネクロス達の共同戦線をETERNAL UNDERWORLDのモニターから見ていたサーチィとナミカは驚きを隠せずにいた。 「何故、こうなるんだ?」 「分からないの、ナミカ?これが、人間が持つ愛の力なのよ」 仲間達がレギオン24を抑えている隙にコメマルとモカヒンがセッションを開始! 「演奏(やる)ぜ、モカヒン!」 「応!ここからは俺達の舞台(ステージ)だ!」 「「スキル・プリズナー!!」」 ギターとベースの演奏が始まり、敵も味方もスキルが使えなくなる! 「な、何だ!?レギオン24が解除されたぁ!?」 姿が露になったドウンにノーキンとチテキーが同時に斬りかかった! 「「天誅!!」」 「あ、あひゃぁー!?」 ドウンの身体を縦と横に斬り裂き、綺麗に四等分され地面に転がる。 「い、嫌だ・・・また死ぬなんて!!」 レウとレウの分身が、二つに割れた顔面を踏み潰す! 「今度こそ死ね。クソ兄」 見事ドウンを討伐したノーキン達・・・レウは皆に礼を言う。 「ありがとう、皆」 その笑顔があまりにも輝いていた為、コメマルは勿論、パーサとビソンさえも見とれてしまった。 「あんな風に笑えたんだな」 「笑えるようになった・・・が正解だろう」 パーサとビソンも、そんなレウを見て微笑んだ。 コメマルがレウに歩み寄ろうと踏み出す。 それと同時にレウの身体が塵になり始めた。 「れ、レウたん!?」 「・・・人間の魂を吸収しないで戦ったから、不完全な身体を維持できなくなった。もう、お別れだ」 「そんな・・・」 悲しそうな顔をするコメマルにレウは微笑む。 「エターナルコア、集めればまた会える」 「そうだな・・・約束、必ず守るから!待っててくれ、レウたん」 レウは最後に、カテーシーと呼ばれる両手でスカートの端を軽く持ち上げるポーズをとってコメマル達に別れを告げた。 「コメマル、皆・・・またね」 塵ゆくレウに手を伸ばすも、塵はコメマルの手をすり抜けて風に舞って消えた。
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