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次の日。
「腕が痛むなぁー」
昨日の怪我がまだ痛む。
だが休むわけにはいかない。日銭を稼いで、昨日みたいにゴキカブリ……とまではいかないものの、廃棄加工肉くらいは食えるくらい稼ぎたい。
だから少年CB-1986番は頑張って起き上がる。
『腕が痛むなぁー』
少年CB-1986番の言葉を繰り返したのは、万能の芽。
「だから真似するなよ」
『だから真似するなよ』
すると、ぐぅ、と少年CB-1986番のお腹がなる。
少年CB-1986番はポケットから茶色い板状のものを取り出す。それを涌き出る汚水に少しつけて、少しふやかしてから口に入れる。
噛みきれないので……というより、少年CB-1986番の歯が半分ほどが無かった。隙間だらけの歯並びは、年齢によるものではないのだろう。
『……。』
くちゃくちゃと咀嚼する少年CB-1986番。万能の芽はそれを模倣し、クチャクチャと口を動かす。
「……ほしいならあげるよ。ほら」
少年CB-1986番はポケットからもうひとつ取り出し、万能の芽の足下へと投げる。
『……』
腹は空かないが模倣はする。
拾い、口に入れる。
「おっ、食べた。おいしいか?」
『おっ、食べた。おいしいか?』
「違うだろ、そういう時は“おいしい”とか“旨い”とかって言うんだぞ」
『……うまい。』
「だろ?」
万能の芽は1日足らずで言葉を模倣し、覚えた。
「それにしてもお前、不思議なやつだなぁ」
『それしにても、不思議なやつか?』
「そうそう、なんにでも化けられるの?」
『そうそう、なんにでも化けられる。』
「へえ、そうなんだ」
『うん、そうなんだ』
少年CB-1986番は考える。ピカーン、と明暗が浮かぶ。
「あっ、そうだ!おまえ、これに化けられるか?」
少年CB-1986番は防護服を着て見せる。
『これに化けられる。』
万能の芽がそう答えると、“防護服を着た少年CB-1986番”を模倣し、完璧に変身した。
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