遠く近い未来。

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遠く近い未来。

   スモッグで曇った空の下。  はヘドロをかき分け、十二枚の子葉を開き、芽生えた。大きさは二センチほどだ。 「……。」  は模倣を身につけていた。  蟻のように見える蜘蛛や、  蛇のように見える芋虫。  花に化けるカマキリに、  珊瑚礁に化ける蛸。  これらは擬態と呼ばれる。  模倣はそのワンランク上の能力だ。  すなわち、  蜘蛛を模倣すれば糸を出せるし、  蛇を模倣すればピット器官を得られる。  もちろん花のように自家受粉も可能で、  珊瑚礁そのものにだってなれる。 「……。」  は万能の芽だった。  万能の芽は外界に触れ、即座にヘドロを模倣して地面に溶けた。  ヘドロから出る有害ガスを模倣し、空中を昇る。  有害ガスは雲に溶け、煙突からの煙と混ざり、黒い雨となって一帯に降り注ぐ。  ふと、全身防護服姿の者が工場から出てきた。黒い雨となった酸性雨はその服へと付着した。 「……。」  その防護服はボロボロで、いくつもの穴をゴムのようなものを溶かして、埋めてい塞いでいるようだった。  そして、防護服を着ているのは10歳にも満たない少年。  少年は言った。 「除草剤の雨だ。僕たちを枯らす、悪い雨。」  少年は工場の中へと戻る。  防護服には滴が付着したままだ。  工場の中。  一言で言えば、そこはゴミ処理場だった。  ゴミの山があちこちにあり、ロボットが操作するショベルカーのような機械が溶鉱炉へゴミを流し込んでいる。防護服を着ている者は、そのロボットや機械の点検と、そしてゴミを漁ることを仕事としていた。 「んむむむむ~~!」  ゴミの山に手を入れ、何かを掴みかける。  グッと体重をかけたとき、突っ込んだ右手に何かが刺さった。 「痛ッ……?!」  少年は手を引き抜く。  防護服に二センチ程の傷がつき、そこに金属片が刺さっていた。どうやら防護服を貫通し、少しだが腕を切ったらしい。 「ついてないなぁ……トホホホホ。」  どこかコミカルに笑う少年。
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