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星が見ているもの
蒼太の死を知ったのは、数日前のことだった。
ベランダで肩を並べた私たちは、まるで弔いのように、彼の好きだった星空を見上げていた。
「私のせい……だよね」
「──違うって」
何かを振り払うように、陽介が首を振る。
「蒼太の母さんが、病気が原因だって説明してくれたよな」
「だけど。私たちがあんなことをしなければ、病状が悪化することはなかったかもしれない」
目尻から涙があふれたのと同時に、流れ星がスッと夜空を横切った。
『ずっと好きだったんだ、さやかの笑った顔』
遠回しの告白のあとで。
『あっ。でも、返事は要らないから。まったく、要らないから』
なぜか、蒼太は急いで付け足した。
今思えば。病気を隠していた彼は、先は長くないと知っていたために、返事は必要ないと言ったのだろう。
あと少しで両想いになれたところだったのに。
曖昧な、恋人未満の関係が続く中。
蒼太の気持ちをはっきりさせたかった私は、彼を試すつもりで、幼なじみの陽介とキスをした。
陽介にとっては軽い気持ち、遊びのキスだったのに。
それを蒼太に見られていて。
彼の容態が突然悪化したらしく、その一週間後に、蒼太の命は消えてしまった。
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