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「あら、あなた。いくら考え方が幼稚だからって、そんなに頭を抱えてはジェシカ嬢に失礼ですよ?彼女はレイラとは違ってろくな教養も無いのですから」
お母様は穏やかにそう言って微笑んだ。
こういう時のお母様はだいたい怒っている。
まあ、娘を怪我させた挙句、これからその娘を糾弾しようとしているのだ。
お母様からすれば怒り以外の感情は浮かばないのだろう。
「そうですよ、父上。彼女にとっての後ろ盾はワイナー様しか無かったんです。そのワイナー様から手を離されたことなんて、馬鹿で愚かな彼女が知っているわけありません」
お兄様も完全に怒っている。
お母様とお兄様はニコニコしているけど、お父様はもう何度目かのため息をついた。
怯えているマナの肩を叩いて頷く私。
マナは覚悟を決めたように深呼吸をした。
パーティー会場へと入ると世界各国のお偉い様が勢ぞろいしていた。
事前にマナやレオから話を聞いていたであろうアルが心配しながら私に近づいてきた。
「レイラ、大丈夫なの?」
「はい」
「確かにジェシカが君を糾弾したところで、ここにいる誰もシルヴァ家を敵に回したくないからジェシカに味方する人間はいないだろうけど……」
「それからのことを心配されていますか?」
「だって、この場で君が助かってもこれからもジェシカはずっとここに居ることになるじゃないか」
「いいえ。彼女にはアストロベガ城の修道院へと行ってもらいます」
「え?大罪人しか行けないはずじゃ……」
「殿下。ジェシカはこれまで数々の罪を犯してきました。一歩間違えば命を落としかねないことだって平気でしてきたんです。それは、罪には問われませんか?私は警告しました。でも彼女は聞き入れなかった。だからこうするしか無かったんです」
私の言葉にアルは息をついた。
「わかった。君がそう言うのなら俺も協力するよ。レイラには沢山助けてもらったからね」
本当にアルはいい人だな。
私が助けたことなんて小さなことなのに。
アルに笑いかけるとティアナが私に駆け寄ってきた。
「レイラ!」
「ティアナ!」
私の手を取って心配そうにするティアナ。
それから私の手を見つめた。
「大丈夫?レオから聞いたけど、ジェシカに突き飛ばされたって……」
「平気。この間開発した傷薬塗ってればすぐ治るし」
「それならいいけど……。何か嫌な予感しかしなくて……」
「大丈夫ですよ、ティアナ嬢」
「アルベルト殿下……」
「私だけではありません。レイラには沢山の人が味方している。彼女が救ってきたのはこの国だけではなく、各国に渡ってです。彼女が困っているのなら今度はこちらから手を貸しましょう。まあ、シルヴァ家の人間である彼女にはあまり必要ない事かもしれませんが」
クスクス笑うアルに少しほっとするティアナ。
しばらくするとクラウスが壇上に登壇した。
その横にはカペル。
正装姿のカペルって本当に心臓に悪い。
なんだあのイケメン。
周りの令嬢達もカペルを見てボーっとしている。
こういう時の私のモブさ加減が嫌になる。
「本日は私の生誕祭にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日私は16歳を迎え、これまでよりも父である国王陛下の仕事を学び、手伝えるように尽力してまいります」
クラウスのスピーチは相変わらずそつがない。
本当に王子様なんだなー。
一緒に話してるときはただのヘタレなんだけど。
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