悪役令嬢、誕生前のお話

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「聞いて、レイラ。私は、クラウス王子が幸せになれるのなら、悪役にだってなれるわ」 大好きな幼馴染が言ったセリフ。 何気ない会話の中でのセリフ。 気にする事なんてないのに、気にするしかなくなってしまった。 一気に甦る記憶に冷や汗が止まらない。 ああ、私は悪い夢でも見ているのだろうか。 『そういうの』はファンタジーの世界での話で現実にはありえない。 だってそうでしょ? 死んだら人間なんて、消えるんだから。 でも……信じるしかなさそうだ。 「どうしたの?レイラ。顔色が悪いわ」 目の前にいるのは幼馴染のティアナ。 物心ついた時から一緒に遊んでて、優しくて、勇敢で、頭がよくて、私は彼女が大好きだ。 だけどそんな彼女が……悪役令嬢になってしまう未来を私は知っている。 今日は私の6歳の誕生日。 『レイラ』 それがこの世界での私の名前。 そんな誕生日に、私は『前世』の記憶を思い出してしまったのだ。 私は『転生』というものをしているらしい。 ファンタジーの中のものだと思っていたけれど、現実に起こるなんて誰が予測できた? それにティアナは、私がとっても嫌っていた悪役令嬢になる(予定)。 そうなったら私は……ティアナの側にいれる? この世界は王子様と恋愛が出来る乙女ゲーム。 6カ国の王子様とその執事や騎士と恋愛が出来るのだ。 そういったゲームでは当然悪役とかは存在しているもの。 その悪役がティアナ。 そ、そんなのって……。 「気分が優れないの?大丈夫?部屋に戻る?」 心配そうに私の肩を抱いてくれるティアナ。 うう……好き……っ。 こんなに優しいのにティアナが悪役令嬢になるわけない。 だけど、私が知る限りティアナは悪役令嬢だ。 何がどうなったらそんな世界に……? 「どうしたんですか!?レイラ!」 「このパーティーの主役が体調不良か?」 そう言って近付いてくるのは、まさしく攻略対象の二人だった。 .
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