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「好きです」
「はい?」
広げたメニュー表から目を離し、その女性は声の主を見あげた。
「失礼しました。聞こえませんでしたか。好きです」
静かで、無機質な声が再度言う。
聞き間違いなんかではなかった。
声を発したロボット店員は、注文をとる仕事を怠り、愛の告白をしてきたのだ。
「リップサービスかしら?」
女性は冷静に尋ねる。若い女性客にそういったサービスを行う店を、女性は知っていた。しかし、自身はロボットに恋する趣味なんて、微塵も持ちあわせていない。
「いいえ。純然たる気持ちです」
ロボット店員は表情一つ変えず言ってのける。
もっとも、人件費削減のために導入されたロボットに、表情を変えるなんて機能はないが。
ここは高級レストランではない。ごく普通のファミリーレストランだ。高性能なロボット店員なんて整備できないだろう。
だとしたら? 女性は結論づける。
「それ、バグよ。修理してもらいなさい」
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