好きだよ。

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 栄太と歩いているとき、紫とすれ違った。 栄太が一瞬気まずげにしたので、私の中で、紫への怒りが再燃して、紫を凝視させた。  その時、目に入った。  紫の鞄についた、キーホルダー。  一年の遠足に行ったとき、おそろいで買った……。  わき上がった感情の波は、何なのだろう。  ただ私は、通り過ぎる紫の腕をつかんで、強くつかんで、 「好きだよ」  と、言いたくなった。 「ねえ、今でも大好きだよ」  言って、紫のきれいな目を見て、そうして、泣き出してしまいたかった。  けど、それは叶わず、紫は過ぎ去っていく。  栄太が、その後ろ姿を、目を細めてみる。私は、栄太の手を握った。  同じ痛みを持つ戦友――栄太は私の肩を抱いた。  紫が、廊下の突き当たりの角を、曲がって消えていくのを、見送る。  もう、すべてがばかばかしい夢想だった。
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