Vol.9

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Vol.9

 私と高崎はホテルを出て、手を繋いで街を歩いた。 「家まで送るよ。」  高崎は言った。しかし、 「帰りたくない…。」  私は高崎に、家に帰りたくない理由を伝えた。  すると高崎は、一緒に私の家に行くと言い、二人で向かうこととなった。母ときちんと向き合い、私の思いを伝えるべきだと提案してくれた。  私の家に到着し、まず私は母に高崎を紹介した。そして私は母に、日頃から感じていることを全て話した。どうせ母は全く向き合ってくれないだろう…。ダメ元で伝えてみた。でも、隣に高崎が居てくれたから、勇気が湧いた。  母の反応は、私の予想とは違った。  意外と素直に受け止めてくれて、少し反省しているようにも見えた。もしかしたら、この場限りで見せたものだったのかもしれないが、それでも嬉しかった。今までは、こんなことすら無かったから…。小さな進展だった。  母は私に “ 今までゴメンね” と言った。初めてのこの言葉に、私は涙が止まらなかった。  母は、高崎を見て微笑み、私に言った。 「好美、アンタ、こんな格好いい彼氏いるなら、初めから早くそう言いなさいよ。また連れておいで。今度一緒に晩ご飯食べよ。今日は突然だったから何にも準備してないから…。」   そう言って、高崎のことを認めてくれた。すると母は、奥の部屋に居る母の彼氏を呼び出し、私たちに改めて彼氏を紹介した。近々結婚しようと思っていると恥ずかしそうに打ち明け、私は母の再婚を祝福した。  面白いくらい、事が上手く進んでいった。これも皆、高崎のおかげだと思った。  玄関まで高崎を見送り、私は高崎に何度も何度も “ありがとう” と伝えた。高崎はニコッと笑って私の頭をポンポンとし、私に手を振って帰っていった。  決めた。  今日から私は  普通の女の子に変身する。  いや、  「私じゃない私」に変身するのをやめる。  ただ、それだけ。  ありのままの自分で、  私らしく生きていく。  私の人生、ここからだ。  私は、SNSに書き込みをした。     ぬくもりレンタル・羅夢は、     本日をもって     閉店させていただきます。     三年間のご愛顧     誠にありがとうございました。
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