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コ
蕎麦屋から帰ってきて、俺と雄馬は車で買い出しに出かけた。いろいろと見て回っていたら、あっというまに夕暮れ時になってしまった。
そのあとは、飯を食って、風呂に入って、軽く酒を飲んで。最後に歯を磨いた。
その晩はまあ、いつも通りのことをしただけなんだが。
一言でいうと、満足度が高かった。
次の日の朝、早めに目が覚めた。
目覚ましより1時間も早い。
隣で眠る雄馬を起こさないようにして、静かにベッドから這い出る。
今日は可燃ごみの日だったと思い立ち、キッチンに置いてある袋の口を縛る。
早朝のごみ捨て置き場。
このマンション専用の、緑の金網で仕切られた4畳ほどの空間。三方は壁で囲まれている。桜の木の下。春になれば、桜吹雪がこの空間を埋めつくしてくれる。
そこには先客がいた。
「おはようございます」
先にこちらから挨拶をする。すると、キツネのような目をした男がふわりと微笑む。2人ともフランス人だと聞いている。アルファ・ビルヂングは国際色豊かなマンションだなと思う。背の低い方の黄金色が、朝陽にあたって眩しい。
「おはようございます」
「おっはよー」
505号室のテオとミカだ。2人はいつも一緒にいる。男同士。年の差がありそうなところ。どんな関係なのかは知らない。でも、とても仲睦まじそうだ。
挨拶だけでは味気ないので、マンションに関わる話を試みる。
「最近、このあたりでコウモリをよく見るんですが……なにか対策などはあるんでしょうか」
びく、とおかしいくらいにミカの身体が反応した。なんだ。コウモリが苦手なのか?
テオがちょっと息を吐いてから答える。
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