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「野田、お前、いっつも新海のおかず食いすぎ」
新海くんを取り囲む誰かが、呆れた声で野田くんに突っ込む。
そうそう。それ、もっと言ってやって。誰だかわからない男子の声に心の中で全力で加勢したけど……。
「だって、にーのの弁当美味すぎんだもん」
もごもごとこもって聞こえてくる野田くんの声から察するに、今日も新海くんのおかずは奪われたらしい。
「つーかさ、にーのの卵焼き、ふわっふわでマジうまいの。もうさ、おれ、にーのに嫁に来てほしい」
は? ふざけ口調の野田くんのセリフに、わたしの頬がさらに引き攣る。
野田のやつ、ふざけんな。新海くんの卵焼きがふわふわでおいしいってことを最初に知ったのはわたしだし。嫁になんて、絶対やらない。
心の中で真面目に憤っていると、一瞬静かになった教室に新海くんの声がぼそり、聞こえてきた。
「……、それはない」
「えー、フラれた」
男子たちの輪の中で笑いが起こって、教室がまた騒がしくなる。
「ニコちゃんお待たせ。ごはん食べよ~」
新海くんを取り囲む男子たちの背中を睨むように見ていると、連れ立ってトイレに行っていたカノンとアキナが教室に戻ってきた。
「うん、おかえり」
カノンとアキナと一緒に、わたしも机の上にお弁当を広げる。
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