キャッチャー

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キャッチャー

 3月28日  猿川が、正社員志望の男女5人を連れて無人島にやって来る。石油備蓄基地など巨大プロジェクトを行うための用地確保の為に無人島と化した。  彼らは、かつての島民たちが眠る墓地で死者蘇生の黒魔術儀式を行うが何も起きず、死体を弄びながらパーティーに興じる。その最中、死者が次々と甦った。   命からがら6人は洞窟の中に逃げ込んだ。コウモリがウジャウジャいる。🦇 「猿川さん、このままじゃ僕たち死んじゃいますよ」   酒井って20代の派遣がワナワナと震えてる。   猿川は明日で40歳になる。くそつまらない30代だった。 「助けてやるから金よこせ」  猿川は酒井にペットボトルを見せて、カラクリを説明した。 「先輩、怪物召喚出来るんですか!?」  及川光博に似た倉田って32歳の派遣が目を輝かせた。 「ってことは人殺したんですか?」  甲本直子(こうもとなおこ)が言った。加藤あいに似た派遣、年齢は知らない。 「何を隠そう、吉田を殺したのはこの俺なんだ」  「マジすか?」  そう言ったのは36歳の笹野福美(ささのふくみ)だ。どこで手に入れたのか?リボルバータイプの拳銃を右手に握ってる。 「アイツがいなくなればリストラされる危険性が減るかもな?」  茶髪のヤンキー、泉谷が言った。確か24歳だ。  泉谷も吉田を毛嫌いしていた。  猿川はペットボトルに向かって呪文を唱えた。  黒い煙とともに金子が現れた。金子ってのは高校の時のダチで、卒業間際にバイク事故で死んだ。 「金子、俺たちを助けてくれ」   金子は果敢にゾンビの群れに向かったが呆気なく喰われてしまった。 「全然ダメじゃないですか!?」  泉谷がキレ気味に言った。  福美が銃をバンバン撃った。だが、3体のゾンビは全て無傷だった。  ゾンビは直子に群がった。 「キャーッ!助けてー!!」 「直子ぉっ!!」  直子の恋人の倉田は今にも泣き出しそうだ。  福美は銃は銃を撃ち続けていた。流れ弾に当たり直子は死んだ。  直子の躯をゾンビはムシャムシャ食べている。  そのすきに猿川と福美、泉谷が洞窟から逃げ出した。酒井と倉田も食われてしまった。  3月29日 - 平成23年度予算案が成立。  猿川、福美、泉谷は横須賀にいた。猿川は山西に電話し、金子がゾンビに食われたことを正直に話した。 《弁償してもらわなければなりませんね?ゾンビを生け捕りにしてください》  福美の案内でどぶ板通りのクラブにやって来た。  どぶ板通りは300mほどの通り・商店街である。スカジャンの発祥地として有名。 アメリカと日本の文化が融合した独特の雰囲気を持つ商店街で、市内の代表的な観光地のひとつ。  地下は武器庫になっている。マスターはどことなく岸谷五朗に似ていた。  猿川はマスターに経緯を話した。 「3万渡せば麻酔銃をくれてやってもいい」  麻酔銃は1950年にコリン・アルバート・マードックが発明した。  主に中・大型の野生動物保護の際や、動物園で動物が逃げ出した場合などの捕獲用に、麻酔を打つ際に利用される。  ボーナスや退職金もない派遣にとって3万奪われるのはメチャクチャツラいが、今はガマンするしかない。  コンビニのATMで金を下ろし、マスターに渡した。  麻酔銃を手に入れた猿川は単身、無人島に向かった。  3月30日  無人島には少年たちがいた。リーダー格は俊樹とう。 「おじさん、この島には聖なる武器が眠ってるって話だぜ」  猿川がコテージの外にあるベンチで、リュックから冷たい缶コーヒーを出して飲んでると、俊樹が話しかけてきた。 「ドラクエに出てくるみたいな武器かな?」  どんな組織にでも綻びは出るものだ。  元々俊樹と仲の悪かった少年、剛志(つよし)は、俊樹が中心であることを気に入らず、また食べ物などにも不自由しない島で自由に生きることを望んで、独自に勇者隊を結成した。剛志は勇者隊のメンバーと共に好き勝手に漫遊し、豚を狩ることで上等なご馳走を得るようになり、やがては俊樹の一派の少年たちもその魅力に引かれ始める。  そんな中、船が島の沖を通りかかったにもかかわらず、その日の当番の猿川が烽火を怠ったのが原因で、少年たちの存在に気付かないまま船は過ぎ去ってしまう。 「全部、オッサンのせいだからな!?」  猿川は俊樹に鳩尾を思い切り殴られた。20歳以上も年下の俊樹に罵声を浴びせられ、猿川は涙を溢した。  それが原因で、俊樹の一派では対立が巻き起こる。その隙を突くように、剛志は俊樹の仲間たちを引き込んでいくまでのカリスマ性まで発揮していく。勇者隊の少年たちは次第に、内面の獣性が目覚めていき、泥絵の具を顔に塗りたくった蛮族のような姿となって、ついには仲間の1人であった慎一を集団で手にかけるまでに至る。慎一は陰で剛志の悪口を言っていた。  仲間のほとんどを剛志に奪われた俊樹は、唯一自分の味方でいてくれた太郎も、剛志の取り巻きである北大路(きたおうじ)に岩を頭上に落とされて殺され、完全に孤立する。その翌日、剛志は自らが王でいられる楽園を脅かしうる、一番目障りな存在であった俊樹を排除すべく、狩猟隊に木の枝を槍のように尖らせて、俊樹を殺害するよう指示する。そこにゾンビたちが襲いかかる。🧟🧟‍♀🧟‍♂  猿川は櫓の上から麻酔銃でゾンビを撃つがビクともしない。  やがて、北大路と剛志が食われてしまう。 「サル、何とかしろよ!」  棕櫚(しゅろ)の木陰で俊樹が叫んだ。  そのとき、テンガロンハットをかぶった男が颯爽と現れた。男は銃を撃った。3体のゾンビを秒殺した。男が手にしていたのはアクケルテという、キルギスの民族叙事詩の主人公マナスの持つ百発百中の白い銃だ。マナスの末裔がこの島に漂流し、埋めたとされる。 「何でアンタがこんなところにいるんだ?」  男は猿川がよく知る人物だった。    無人島には聖なる武器が眠っている。武器を手に入れた扇谷、ゾンビを倒す。娘を傷物にした猿川に復讐を果たす。  4月7日 - 東北地方太平洋沖地震の余震と見られるM7.1の地震が発生し、宮城県栗原市・仙台市で最大震度6強を観測。死者6人・重軽傷者230人を出す。一時、宮城県に津波警報、青森県太平洋沿岸・岩手県・福島県・茨城県に津波注意報が発表。  午前7時、俺は中禅寺湖近くのコテージで猿川の遺体を見つけた。猿川は背中にはダガーナイフが深々と刺さっていた。床に血で『キャッチャー』というダイイングメッセージが書かれてあった。  野村克也、古田敦也などが名キャッチャーだ。  1990年にヤクルトの監督に就任した野村は、ID野球を提唱しヤクルト黄金時代の礎を築いた。  どうやら猿川を殺した犯人は野球選手らしい。  莉緒は学生時代に球場で売り子をしていたらしい。ちなみに猿川は大阪桐蔭出身だ。ヤクルトの八重樫幸雄はオープスタンスだった。打席に立つ際に、投手寄りの足を右打者なら三塁方向に、左打者なら一塁方向に開いて構える打撃スタイルだ。    4月8日  昼休み、泉谷ってガキと休憩室で話した。彼は高校時代野球をやっていたらしい。しかもキャッチャー。 「捕手以外の野手は投手が投げるまではフェアグラウンド上に守備位置を取ることと定められているんですが、捕手は野手の中で唯一ファウルグラウンドに守備位置が定められており、投手や野手とは逆の方向を向いて守備します。投手が投球動作を始め、その手からボールが離れるまで、捕手はファウルグラウンドに設けられたキャッチャーボックスに位置している必要があります」と、ウンチクを語っていた。    守備番号の2、英略字のC、キャッチャーは女房役や扇の要とも呼ばれる。     「優香をあんな目にあわせた、猿川が悪いんだよ」  扇谷は冷たい笑みを浮かべた。  扇谷から聖なる武器を手に入れた原、粛清を恐れて扇谷を殺した石川の召喚したグリフィンと戦う。
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