珠希の陰謀

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珠希の陰謀

 私は珠希(たまき)。 この家に住み着く幽霊。 それとも背後霊? まあ、そんなトコかな? だから誰の目にも見えないの。 それがちょっぴり不満。 だって本当はね、ダーリンに愛してもらいたくて此方の世界に居残ることにしたんだもの。 養女の美紀(みき)に憑依したと言う形をとってね。 だって血の繋がりのない二人なら、何も問題ないでしょう。 何て嘘。 私が死んだ時、生死の境をさ迷い続けていたダーリンを助けたくて…… 本当にそれだけだったのよ最初のうちは。 でもダーリンったら、全然気付いてくれない。 あんなに愛し合った私が傍にいるのにね。 もー焦れったい。 何てもんでもない。 本当に本当に、愛してもらいたいの。 だから賭けてみることにしたのよ。 どんな方法かは内緒。 ダーリンったらきっと目を丸くして私…… じゃあなかった美紀を見つめるわね。 今からドキドキ。 あー、興奮して来ちゃった。 ダーリン早く…… 私に気付いて。 私はずっとダーリンの傍に居るからね。  今までも時々お邪魔してゾックとさせてはいたけれど、今日こそハートをゲットしてみせるわ。 だって今日は私の誕生日なんだもん。 生きていれば…… あれっ!? 私幾つ? そう確か私は、昭和四十三年の産まれだったわ。 ダーリンは四十五年。 私の二歳年下なの。 ダーリンは元プロレスラーの平成の小影虎(こかげとら)と呼ばれていた人気者だったの。 何故そんな風に呼ばれたかと言うと…… 第一は長尾正樹(ながおまさき)と言う名前ね。 長尾影虎の子孫でもないけどね。 だって長尾影虎はその後の上杉謙信だもの。 子供は設けず養子を育てたから。 ダーリンは背はあまり高くはなかったけど、物凄く格好イイからファンが大勢いたの。 でも私にゾッコンだったから浮気の心配なんてなかったのよ。 だからかな…… 私一筋だったから、傍にいる私に気付いてもくれないのかな?  でもね、既に美紀の体の中には先客が居たの。 ダーリンの初恋の人なんだけどね。 でも私達仲良くやっているの。 時々二人でボーッと旦那様を見つめている。 その時感じたの。 この人結城智恵(ゆうきちえ)さんて言うのだけど、本当にダーリンを愛しているのだなと。 この結城智恵さんが、美紀の本当のママなのよ。 でもだからって、美紀はダーリンの子供じゃないのよ。 ダーリンは私一筋だったから養女にするのを躊躇わなかったわ。 だから時々彼女にお任せして、私は美紀から離れてダーリンとイチャイチャ。 したいのに出来ないの。 本当にダーリンったら、真面目なんだから……  そう…… ダーリンはとにかく真面目。 真面目過ぎて馬鹿が付くくらい。 だから、きっと美紀の中に私を感じていても手が出せないのよね。 解っているの…… 全部解っているの。 お見通しなの。 だから尚更悲しいの。 ダーリンに愛されたくてウズウズしている私に気を遣う素振りも見せてはくれないから。 だから見ていて、今日こそバッチリ決めたげる。 ダーリンは私だけの物。 ううん…… 三人のかな? 結城智恵さんと私と美紀…… だって美紀は……  さあそろそろ美紀のお目覚めの時間よ。 何時もよりちょっと早くて大変だけど、美紀頑張ってちょうだいね。 私の愛するダーリンと息子達のためにね。 あの子達…… 何の感謝もしないけど許してあげる。 それが母心だと思うなら。 美紀だって、本当は喜んでいるはずだから。 だってみんな可愛いもの。 可愛いくて可愛いくて堪らなくなるもの。 でも勿論ダーリンが一番よ。 あっ美紀が伸びを始めたわ。 それじゃ美紀に交代するかな? 昼間は美紀に任せて、夜は…… あーん、 やっぱりダーリンと一緒のベッドで眠りたいわ。
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