さようなら

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さようなら

 右足を切った。いや、切り落とされた。膝から下15cm。そこから下が無くなった。  16年間、共に歩んできた足。でもあまり悲しくはなかった。と言うか、激痛から逃れられた解放感の方が増していて、むしろすっきりしたくらいだ。  十日ほど前、足を怪我した。床に落ちていたカッターナイフで足裏を切ってしまった。  傷は深く鮮血は床を汚した。痛かったものの、絆創膏を何枚も貼って放置していた。  簡単に言うと、そこからばい菌が入って化膿。数日間、高熱が続いたため、仕方なく病院へ連れて行かれた。  病院の医者はなぜ早く連れて来なかったのかを、母に詰めよった。そんな問答はやめてほしい。今そこを責めたって、意味がない。  それよりも、早く何とかしてくれ。  べら棒に痛いんだ。  様々な検査の後、僕はすぐに手術室へと連れて行かれた。麻酔により秒で落ちた僕は、数時間後、病院のベッドで目を覚ました。  今日がいつで、今が何時なのか、皆目見当つかなかったが、痛みは幾分楽になっていた。  まだ麻酔が効いているのだろう。ぼんやりして頭が働かない。  僕はもう一度、眠りに落ちた。隣で鳴る心電図の機械音を聞きながら。 
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