シロい出逢い

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シロい出逢い

僕の生まれた場所では、不思議な言い伝えがある 「十二歳までは、お稲荷様の社に近付くな」 これが守れない子供は、神隠しにあうと言う伝説 この村は、あまり人口が減らない 一時都会へ出るものの 何故か半分以上がまたこの村に帰ってくる Uターン率が高い たまに他所の村の役所の人や村長さんが視察に来るが うちの村の役所の人間さえも理由はわからない まあ、住みやすいって所で落ち着いてるみたい この村には、奇祭がある 奇祭と呼ぶにはそんなに「奇」とは思わないが面白い祭りである それは、豊作を祝う秋祭りにキツネの面と尻尾を着けて参加をする ただ、見ているだけでもキツネの面と尻尾を着ける ばあちゃん達が言うには、昔この村はキツネと共存していて作物を泥棒から守っていてくれたらしい で、ありがとうの気持ちを込めてキツネにも参加をしてもらったと そんな話を昔から聞いていて 僕は、不思議には思わなかった 「キツネと共存か~逢えたらなでさせてもらえるかな?」 僕の家は、代々お稲荷さんを管理している 僕も勿論 「お稲荷様には近付くな」 と言われて育った が、僕の家の離れのある一角から お社の一角が見える作りでそれは身長の小さい子供にしか見えない 僕は、よくそこからお社を見ていた 勿論これは、誰にも内緒 内緒にしないと離れに来るの禁止になっちゃうから それは、誰に教わるでもなく そうなるなと言うのは子供ながらにも感じてた 異変に気がついたのは、いつだったか思い出せないが 気が付くとお社の側で着物を着た僕と同じ年位の子供が居るのを気が付く ━あのこの一番になりたい━ 瞬間的に思った だが、お稲荷様に近付くな 口を酸っぱくして言われている 僕は、あのこがこっちに来ないかずっと見てる あのこもこっちに気が付き僕を見る ただ見つめあって、手を振り、ニッコリするだけ それだけなのに嬉しくなる 村には、幼稚園や保育園が無いから 集団生活は、小学生になってから 僕の学年…いや、小学校は何故か女子が極端に少ない 中学生になると女子児童の家庭がUターンして村戻る 何だか不思議だった そんな我が家も姉ちゃんが都会に住む親戚の家に預けられていた 決まって最後の一言が 「女の子だからねぇ」 と言われていた その年の秋祭り 僕は、参加するのに面をつけて同級生との待ち合わせ場所に向かおうと母屋から出た 納屋の角に見たことある着物の柄がみえた 「なにしてるの?」 お面を着けてるけど話しかけてみた 一瞬驚いたようだったが 「オレ…」 言いにくそう 「お面ないの?貸そうか?」 僕は、自分のお面を取り彼へ渡す そして自分は、また母屋にダッシュして着けながら戻って来た 「お祭り出れるね」 「うん、ありがとう」 二人で顔を見ながら笑う 僕達は、手を繋ぎ一緒にお祭りに向かう お神輿に付いて回ったり 山車を引っ張ってねり歩いたり もらったジュースを二人で座って飲んだ 「ね、名前は?僕は、上白(かみしろ) 雪斗(ゆきと)だよ」 「オレは、ハク。 九尾(きゅうび)白凰(はくおう)」 「ハクオウ?」 「うん、白って書く」 「へー、白なら僕も一緒だ。僕、雪だから白いよ」 二人で白い話をしているのに顔が真っ赤になった 「あ~雲もシロだよね。白い雲が見えたら思い出してね」 何故か白凰の尻尾は、嬉しそうに揺れているので 僕は、その尻尾をナデナデしていた 祭りは終わり皆家々と帰る 僕は、その日の夕飯の時に白凰の話をした 「雪は、今日誰と一緒だったんだ?」 ばあちゃんに聞かれた 「ハクだよ」 「ハク?どこの子だい?」 「知らない…」 皆がピクッてなったのがわかった 「知らない?どこで会った子だ?」 「ん~と、裏によく居たよ?」 「裏?」 今日の夕飯は、僕の好物ばかりでばあちゃんの顔を見てなかった 「雪は、社に行ったんか?」 そう言われて顔をあげるとばあちゃん般若になってた 叱られる!!そう思った 「社には行ってない…離れから見えた…」 ご飯の途中なのに家族全員で離れに向かい見える場所を教えた 「母さん…これは……」 「盲点じゃな…」 僕の母は、おいおい泣いてる 「早い所ここ出て行け、念の為雪が二十歳まで戻るな」 ばあちゃんは、そう言い夕飯に戻って行く 父さんは、仕事をどうするか誰かに電話をし出した 母さんは、僕を抱えていつまでも泣いている 七歳の年の秋祭りの日だった
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