不器用な恋人たち

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「あっ……、あああっ!」  悲鳴と同時に、シンバルが落ちたみたいな派手な音がした。  リビングでテレビを見ていた俺は、あまりの騒音に飛び上がり、慌てて楓花(ふうか)の元に駆け寄った。今のは、夕食後の食器洗いをしている彼女が鍋やフォークを落とした音に違いない。  しかし、俺が駆けつけたときには、彼女は食器を拾い集めてすでに洗い直していた。てきぱきと布巾で水滴をぬぐっている。  彼女の手や足にケガがないことを確認してほっとしつつ、そのリカバリーの速さに感心した。 (……さすが、有能キャリアウーマン)。  仕事一筋で生きてきた彼女は。本原(もとはら) 楓花(ふうか)。初対面でいきなりプロポーズしてきた、現・俺の奥さんである。
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