01 運命の番

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〜 晴哉 視点 〜 「 はぁ…最悪だ 」 今日はとことんツイてない。 黒猫には貶されるし、その後に運命の番に会うなんて思わなかった。 家に駆け込んで入り、玄関の扉の前で座り込んでは、涙が滲む目元を拭く。 「 ……運命の番だったのに、逃げてしまった…もう二度と…会えないだろうな…。でも、会えたところで…俺は…不能な雄だ 」 俺がΩなら受けに回れば、達しなくても孕むことが出来るが… 彼は明らかに雄だった…。 俺が受けに回ったところで気休めにしかならないから、立場を変えてやることができない。 それ以前に連絡先を聞かなかったから、もう一度会える確率は低いだろう。 「 でも、かなり…イケメンだった… 」 街の夜景がキラキラ光って反射した前髪の長いストレートの黒髪に、アメジスト色の瞳をしていたと思う。 身長も185cmはありそうで、 俺より7cmぐらいは気持ち高かっただろう。 少し踵のある靴を履いてその位の差だったから、彼はもしかしたら…もう少し高いかも知れない。 Ωは女性らしい肉体や見た目をしてる奴が多いが、あの男は細身でスラッとしたモデル体型をしていながら厚みはあった。 恐らく、ジムでトレーニングしてる位には鍛えてるだろう…。 筋肉が付きづらいはずなのに…。 「 やばいな…触れたかった、抱き締めたかった… 」 驚いた顔をしていたが、頬に触れて感触や匂いを、確かめたいと思うぐらいに惹かれた。 こんな気持ちは初めてだが、やっぱり不能ってことが落ち込み要素に入る。 「 はぁ、さっさと風呂入って寝よ… 」 此処にいても仕方ないと思い、玄関から立ち上がり靴を脱ぎ、踵を揃えてからリビングへと入り、ポケットに入ってる財布やスマホをダイニングテーブルに置いてから、廊下を進んだ先にある風呂へと行く。   「 やっぱり…俺のペニス、凶器だよな 」 シャワーを浴び、身体を洗いながら目線を股間へと落とせば、髪と同じツートンの陰毛がサラッと生えた下から覗く、ペニスを見詰めて思う。 あの黒猫も、血が垂れていたのを思い出すとこのトケが無ければいいと思ってしまう。 「 手で擦っていても…手の平が、ザラザラして痛いし…これで速度を速くなると…っ… 」 ナカに埋めて腰を揺らしてる時と同じ速度で手へと擦り付けて、壁に片腕を当てて目線を股間に落としたまま動かしていれば、手の平はヤスリで擦っていくようなジョリジョリとした感触がして痛む。 これが柔らかい肉壁の中だと考えると、申し訳ない…。   「 はぁ…勃起はするのに…これ以上が無理だ… 」 先走りぐらい出てくれればいいのだが、それすらなくて干からびた砂漠のよう。 余りにも反応が悪いなら、腹立ってボディーソープを手の平に向け、それを陰茎に擦り付けては擦っていく。 「 はぁ、っ…頼むから、射精出来るように…なってくれ… 」 徐々に泡立つだけで一向に我慢汁すら出ない事に辛くなり、壁へと拳を当て軽く殴る。 「 なんで、俺は…射精出来ないんだ…!気持ちいいはずだろう…。……こんなにも、イくって…大変なのかよ…… 」 勃起だけして膨らむ陰茎なんて、只のイボがついたバイブに過ぎない。 そんな使い道しか無いのなら、彼に… ゙ 番になって欲しい ゙と言えるわけがない。 彼には…俺ではなく、別のαと番になって子供を作って欲しい…。 そして、心と身体も癒やされたらいいと思うのに…。 「 嫌だな……嫌だ…。彼が…他の番になるのは……。でも…俺にはそれを止める資格がない…。あ゙ぁ……なんで俺は…出来損ないなんだよ… 」 崩れるように座り込んで、泣きながら頭からシャワーに打たれていた。 今だけは、このシャワーの音や水が全てを洗い流してくれる……。 〜 嵐 視点 〜 「 兎月にそれが出来るといいが…。彼奴は、何度も身体を重ねたり、それ専門の人を雇って手伝って貰ったりしたみたいだが…。砂漠のように乾燥しきってたようだ。カウパーすら出無いとなると…難しいんじゃないか? 」 豹牙(ひょが)副社長は、届いた焼き鳥を2本を持ってそれを豪快に1度に食べて咀嚼しては、飲み込んだ後に話を続けた。  白虎(はくと)社長は、永い時間悩んでることも、改善しようとしてるって事も話してくれた為に、彼に対しての優しさを感じられる。 彼は、俺と親しくなることで白虎社長が傷つくのを恐れてるし、そうならないようにしたいのだと…。 「 確かに、俺が出来るといえばΩなりの誘惑や誘うようなテクだけです。寧ろ…自信気に言ったけど、俺は経験が少ない。でも…彼と向き合いたいと思う気持ちはありますよ 」 経験少ない…んじゃない、全く無い。 いつか出会うαの為に、AV動画やDVD、獣人向けのアダルトを見て知識があるだけで、挿入されたことも無ければ、舌を使って舐めたこともない。 それでも、イカしてあげたいってのは紛れもなく、彼自身と気持ちよくなりたいっていう意志だ。 「 彼奴は…Ωの発情フェロモンにも鈍いんだ。だから、御前の匂いを当てたときは驚いた 」 「 そうなんですか? 」  「 嗚呼、多少なりど良い匂い゙と言う程度はあるみたいだが…それによって理性が揺らぐことはない。欲はそこそこ掻き立てられるみたいだがな 」 4本目の串を持った彼は、それを大口を開けて食べては、小さく頷くのを見て少しだけ、親から聞いたことある話を思い出した。 ゙ αの中にはね、一人だけしか発情しない人もいるの。彼はきっと…運命の番と出会う為にそうなるように、神様が決めたのかもね ゙   そう、お伽噺のような話を聞いていた。 番としての契約をしてないのに、一人だけのΩしか発情しないαがいるってことを。 そのαは孤独だったが、王子という立場もあって皆から慕われていたが、いつも舞踏会の日に自分だけのΩを探していたと…。 そして、隣国の村はずれに住んでる貧乏なΩを見つけたことで、彼は妃として迎え入れて、永久に愛し合った…。   その名残があるからこそ、 今も尚…運命の番なんてものがあるって。 両親は仲のいいβの夫婦だった。 俺なΩとして生まれても、受け入れてくれるし… 寧ろ、大切な人の子供を産めるために…神様が与えてくれた身体だと言ってくれた。 その為に童貞も処女も守ってきて、お伽噺のような王子様に会えるのを楽しみに生きてきた。 お姫様みたいな、女の子のドレスを作るのが好きで、男性のΩも着れるような身体の形やバランスを隠せるようなデザインとか考え、それは前回のショーで大きな反響があった。 今はもう、男のΩも堂々とドレスを着て結婚式が出来る時代。 だから、夢はウェディングドレスを着ることだ。 「 やっぱり…俺は諦めません。俺を運命の番だと手を取ってくれたなら、離さないようにしてほしい。まぁ、明日から会えるので離しませんがね 」 「 ククッ……好きにしろ。余り…会社内でいちゃつくと、晴哉狙いの奴から文句を言われるから、程々にな?彼奴は、αである以前に容姿でモテるから 」 「 でしょうね、可愛かったですから 」 「( 格好いいと言われる側なんだが…まぁいいか )」 お腹空いていたし、俺も食べようと思い割り箸で唐揚げを摘んでは口に入れていく。 「 さてと、俺は妻と子供が待ってるから帰る。付き合わせて悪かった。気をつけて帰れよ? 」 「 はい、大丈夫ですよ。ごちそうさまでした 」 その後、晴哉さんの他の話を聞きながら、俺達はお互いの家に帰った。 明日から、俺に振り向いてもらう為に頑張ろう。 仕事も忘れず…。 「 フフッ…楽しみ 」
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